Lonesome Cowboy

70年代のロック、シンガーソングライターに始まり、カントリー、ブルーグラス、ブルース、サザンソウルとアメリカンルーツ音楽に根ざした音楽をこよなく愛する1966年生まれ。アメリカ音楽の数々の「聖地」を巡る旅も体験。翻訳とPRツールデザインを生業としています。

Lonesome Cowboy

70年代のロック、シンガーソングライターに始まり、カントリー、ブルーグラス、ブルース、サザンソウルとアメリカンルーツ音楽に根ざした音楽をこよなく愛する1966年生まれ。アメリカ音楽の数々の「聖地」を巡る旅も体験。翻訳とPRツールデザインを生業としています。

最近の記事

ホノルル中古レコードショップ訪問記(2024年11月)

今月初め、久しぶりにハワイに行ってきた。その目的のひとつが中古レコード・ショッピング。過去2回訪れている「馴染み」の店に加え、今回はその近くの比較的新しめの店も覗いてみた。時間の関係で2軒しか行けなかったが、備忘録の意味も兼ねて2店の特徴・品揃えなどを記してみた。アナログレコード掘りが好きな方の参考になれば幸いだ。 ハワイを訪れるのは2018年以来。コロナ禍以降は初めてだ。前回は1ドル=110円くらいだったので、アメリカのインフレと合わせて、物価は円換算で2倍近く上がった印

    • アルバムカバーを語る ─ コッシュ(Kosh)のデザイン

      ここ数年来、若い人たちの間でも脚光を浴びてきているアナログレコード。その理由のひとつに、ジャケットを飾っておけるからというのがあるという。「ジャケ買い」は昔からあったが、ストリーミングでしか音楽を聴いたことがないような世代にとっては、LPのジャケットは新鮮でお洒落なインテリア・アイテムなのだろう。 アナログレコードで育った我々の世代はどうだったかと言えば、LPのジャケットは、中身の音楽と一体になった、いわば「総合芸術」の一部だった。ジャケットやインナースリーブを眺めながら、

      • 【追悼】 クリス・クリストファーソン ─ アウトローの祈り

        クリス・クリストファーソンが亡くなった。2024年9月28日、享年88歳。近年の彼の動向についてはあまりフォローしていなかったのだが、年齢的には長生きと言っていいのではないだろうか。冥福を祈りたい。 クリストファーソン(本来、発音的には「クリストファスン」の方が近い)は、ここ日本では「映画『スター誕生』や『コンボイ』で主演した俳優」、「リタ・クーリッジの元旦那」、あるいは「ジャニス・ジョプリンの遺作ヒット『Me and Bobby McGee』の作者」といった認識が一般的だ

        • 【追悼】メモリーズ・オブ・J.D.サウザー

          J.D.サウザーの訃報が届いた。9月18日の昼過ぎ、なにげなくFacebookを開いてみるとフィードのトップにJ.D.サウザーの近影が現れた。その数分前にアップされたばかりのスティーヴン・ビショップの投稿だった。 寝耳に水だった。今年7月には彼自身のFacebookページにカーラ・ボノフとのジョイントを含む、複数のコンサート告知が出ていた。いずれも今秋から来春にかけてのものであり、彼が亡くなることなど考えてもいなかった。報道によると、亡くなったのは現地時間の2024年9月1

          ローレル・キャニオンの記憶を辿る

          ここ数週間、私の周辺(note内)では、リンダ・ロンシュタットに関する話題で盛り上がっている。彼女のドキュメンタリー映画『Linda Ronstadt: The Sound of My Voice』(2019年)や、1970年前後に彼女を含めたロサンゼルス・エリアの若いミュージシャンたちが一種のコミュニティを形成していたローレル・キャニオンにスポットを当てたドキュメンタリー『Laurel Canyon』(『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』2020年)をご覧

          ローレル・キャニオンの記憶を辿る

          ダン・ダグモアの最近のインタビューと名演10選

          今回も70年代の南カリフォルニアのロックに関するお話。前回は、グラム・パーソンズとリンダロンシュタットの接点を軸に「カントリーロック」というスタイルが形成されていく過程での、実験的試みやそのルーツとなった音楽について検証した。 今回は、リンダたちが追求していた音楽が、「カントリーロック」という時空の限られたジャンルから、より普遍的なアメリカン・ミュージックへと変遷していった過程を、あるミュージシャンにフォーカスすることで掘り下げてみたい。そのミュージシャンとは、70年代中盤

          ダン・ダグモアの最近のインタビューと名演10選

          リンダ・ロンシュタットとグラム・パーソンズの決して意外ではない接点

          前回・前々回の記事で、「カントリーロックのパイオニア」と言われるグラム・パーソンズの生涯について紹介した。1960年代末から70年代初頭のロサンゼルスで華開いた「カントリーロック」──その形成の過程でグラム・パーソンズが果たした役割は大きいが、カントリーロックは決してグラムひとりが作り上げたものではない。全米各地からこの地に引き寄せられてきた若者の才能とエンターテイメント業界のコマーシャリズムが入り混じった一種独特なカルチャーの下で、ヒッピー世代のミュージシャンたちが互いに影

          リンダ・ロンシュタットとグラム・パーソンズの決して意外ではない接点

          グラム・パーソンズ、そして、ジョシュア・トゥリー(後編)

          今日「アメリカーナ」や「ルーツロック」と言われる音楽の歴史を語る際、無視できない人物のひとりがグラム・パーソンズだろう。前回の記事では、「カントリーロック」のパイオニアと言われる彼がどのような音楽をつくってきたのか、そして、そこに至るまでどのような人生を過ごしてきたのか、その断片を紹介した。今回は、彼の命をわずか26年で奪うことになった非業の死にまつわるエピソードと、その背景にある、ある場所の存在について語ってみたい。 1973年9月、2枚目のソロアルバムのレコーディングを

          グラム・パーソンズ、そして、ジョシュア・トゥリー(後編)

          グラム・パーソンズ、そして ジョシュア・トゥリー(前編)

          前回の記事でクリス・ヒルマンとバーニー・レドンについて取り上げたので、今回は、フライング・ブリトー・ブラザーズで彼らのバンドメイトだったグラム・パーソンズについて書いてみたい。 グラム・パーソンズと言えば、今でこそ「カントリーロックのパイオニア」として一定の認知と評価を得ているが、私が彼の音楽を意識し始めた80年代前半には、まだまだ知る人ぞ知る存在だった。エルヴィス・コステロが81年に彼の曲を取り上げたりしていたが、当時は大して話題にも上らなかったと思う。そんなパーソンズが

          グラム・パーソンズ、そして ジョシュア・トゥリー(前編)

          バーニー・レドン×クリス・ヒルマン:最新の対談動画で知ったいくつかのエピソード

          先日、note仲間の音楽の杜さんが、フライング・ブリトー・ブラザーズのサードアルバムとディラード&クラークのファーストアルバムを相次いで紹介されていた。すると、まるでそれにタイミングを合わせたかのように、ある興味深い対談動画がカントリーミュージック名誉殿堂博物館のサイトにアップされた。フライング・ブリトー・ブラザーズでバンドメイトだったクリス・ヒルマンとバーニー・レドンの最近の対談だ。ご存じのように、クリス・ヒルマンはバーズのオリジナルメンバー、そして、バーニー・レドンはイー

          バーニー・レドン×クリス・ヒルマン:最新の対談動画で知ったいくつかのエピソード

          国境の町 エルパソ

          先月(2024年5月)末、ウィリー・ネルソンの新しいアルバムが発売になった。ソロスタジオ作としては何と75作目。コラボレーションも含めれば、彼が作ってきたアルバムは150を超える。1933年(昭和8年)生まれの91歳、この年齢で現役バリバリで活躍している芸能人は、他には黒柳徹子さんくらいしかいないのではないだろうか。さすがに往時に比べれば声はガラガラだが、それでも十分に伸びのある歌い方だ。しかも、若い頃とは違う、ある種の凄みすら感じさせる。 新作のタイトルは『The Bor

          国境の町 エルパソ

          44年後の感慨:ドゥービー・ブラザーズ「Keep This Train A-Rollin'」

          先日、note仲間のよっしーさんがドゥービー・ブラザーズの76年のアルバム『Takin' It to the Streets』(邦題『ドゥービー・ストリート』)について書かれた記事(下記)を読んだ後、それに感化されてマイケル・マクドナルド期のドゥービーのアルバムを順番に引っ張り出して聞いていた。 『Takin' It to the Streets』から順を追ってBGM的に何げなく聞いていたのだが、そんな中で今まで気にしていなかったある曲の歌詞が耳に留まった。それは、解散前の

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          【追悼】デイヴィッド・サンボーンの歌伴名演10選

          去る5月12日、日本でも人気の高いサックス奏者、デイヴィッド・サンボーンが亡くなった。78歳だった。最近も「サンボーン・セッションズ」というYouTubeチャンネルでゲストとの共演を発信していたし、コンサートの予定も入っていた。なので、私自身は寝耳に水という感じだったのだが、実はここ数年来、前立腺癌と戦っていたという。彼のFacebookページをフォローしながら見落としていたのだが、この5月4日の投稿では、「歩くのも困難なくらいの痛みが脊椎にあるため、5月に予定されていたコン

          【追悼】デイヴィッド・サンボーンの歌伴名演10選

          ブルーグラス名盤探訪『J.D. Crowe & the New South』(1975年)

          毎年新緑の季節になると、ブルーグラスが聞きたくなる。本能的なものか、その言葉の響きからくる「刷り込み」に近いものなのかはわからない。 ご承知のとおり、「ブルーグラス」というジャンル名は、この音楽スタイルを確立したビル・モンローのグループ名「ブルーグラス・ボーイズ」に由来する。1930〜40年代にかけて、スコットランドやアイルランドにルーツを持つアパラチア地域で歌い奏でられていた民俗音楽にブルースやジャズの要素を取り入れ、よりドライブ感・スウィング感のある音楽へと進化させたの

          ブルーグラス名盤探訪『J.D. Crowe & the New South』(1975年)

          ジェイムス・テイラー コンサート雑感(2024年4月6日 東京ガーデンシアター)

          ジェイムス・テイラーは、私にとって特別な存在だ。14〜5歳の頃に初めて聞いて以来40数年、ジェイムスの音楽は常に私の人生のBGMだった。20歳前後の多感な時期、彼の曲はジャクソン・ブラウンの曲とともに、私の人生の「道標」だった。「Country Road」や「Riding On A Railroad」に自分探し・アメリカ探しの旅に出る勇気をもらい、疲れた時には「Yon Can Close Your Eyes」や「Don't Let Me Be Lonely Tonight」に

          ジェイムス・テイラー コンサート雑感(2024年4月6日 東京ガーデンシアター)

          L.ヘルム/J.キャッシュ/E.ハリス/C.ダニエルズらによる出色のコンセプトアルバム『The Legend Of Jesse James』

          前回の記事でエミルー・ハリスの2番目の夫ブライアン・アハーンについて、彼が関わった70年代の作品を軸に取り上げた。一方で、エミルーの80年代を語るとき無視できないのが、3番目の夫ポール・ケナリーの存在だ。今回は、このポール・ケナリーについて、彼を語る上で鍵となるアルバム『The Legend Of Jesse James』を軸に掘り下げたい。 アルバム『The Legend Of Jesse James』(邦題『ジェシー・ジェイムスの伝説』)は、1980年にA&Mレコードか

          L.ヘルム/J.キャッシュ/E.ハリス/C.ダニエルズらによる出色のコンセプトアルバム『The Legend Of Jesse James』