あまりに滑稽な、体面という問題について
誰に遠慮する必要もないのに、真実ではないことばかりを書こうとする自らの手を、指を折りたい。自分で自分をよく見せたいという気持ちに唾を吐きかけたい。どうしたって奥行きのないしょうもない人間なのに、覚えたての言葉を並べて、自分の浅さを覆い隠した気でいる愚かさ。
体面という、みずからの実体と世界の境界。他人の評価や信頼、あるいは愛、経済力、能力、特質…。それらは時に蜃気楼として、ひとつの卑小な肉体をあいまいに大きく見せる。そこにはいかほどの意味もなく、それでいて、やはり致命的に、「奥行き」を欠いている。
それはセンスとしか形容できない一定の謙虚さであり、用いられる言語とその人間が放つ美しさ(もちろん、見た目ではない)の組み合わせである気がしている。
ひとつの正直から書くことは始めなければならない。それは真実それ自体への実直さではなく、ある意味不埒に、だらしない真実を打ち明けようとする怠惰である。