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ある地名の風景

箒杉に誘われて    hoki

ここは神奈川県山北町。
丹沢湖からさらに4キロほど奥に
町の名物”箒杉”があります。

樹齢2000年、高さ45m、根廻18mという巨木で、
国の天然記念物です。

何回か見ているのですが、
私が興味を抱くのはその姿形ではなく、名前です。

箒沢という集落に箒杉があるのですが、
これには次のような言い伝えがあります。

その昔、このあたりでは禁令により杉(スギ)・桧(ヒノキ)・
欅(ケヤキ)・樅(モミ)・樛(ツガ)・榧(カヤ)は
伐ることが禁じられていたそうで、
それゆえに宝木沢と呼ばれていたのが、
後に”箒沢”に変わったというものです。

またもう一つ、形が箒に似ているから・・
というのもあります。

杉の木と集落名の関係は
前者は地名が先、後者は杉の木が先です。

私も集落の地名が先だと思うのですが、
地名の意味については別な理由です。

崖を表すのに「ハケ」という言葉があります。
これは主に東日本の地名に多くみられ、
金沢八景や八景坂の「ハッケイ」、
栃木の思川にある川化の「バケ」、
長野の羽毛山の「ハケ」、
山梨の市川三郷町にある堀切「ホッキ」などなど・・

私はこの”ハケ”という語と”ホーキ”は同じではないかと思っています。
地名は言葉ですから、上の例のようにいろいろに変化します。

四国の吉野川上流の大歩危(おおぼけ)、小歩危(こぼけ)の
”ぼけ”も元は”オオホキ”、”コホキ”と言ったものが変化したそうです。
ここも川沿いの崖です。

箒沢のあたりは急斜面や崖には事欠きません。
こうした地形のそばにできた集落を
”ハケ沢”あるいは”ホーキ沢”と呼んだのではないかと。

知り合いに法木さんという人がいるので
こんど聞いてみようかな(笑)

(神奈川県山北町)

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