命の誕生がもたらす出会いを否定しない世界へ
先日いとこが3178gの女の子を出産しました。
今どき珍しい健康優良児!命の誕生はやはり特別なものがありますね。本当におめでとうございます。
科学文明に頼り生きる人間も所詮は動物。個の誕生が種の存続に繋がる繁殖行動はDNAに刻まれたプログラムなのです。
犬や猫もこうした繁殖行動が正しく行われるように出来れば、今よりもっと良い環境と関係性が作れそうです。
そう思いませんか?
というわけで今日は炎上覚悟でめちゃくちゃデリケートな繁殖についてのお話をさせていただきます。
出産という出会いの機会を増やしたい
殺処分の犬猫を減らすということを目標にしておいて繁殖を推奨するなんてというご意見もあるかもしれませんが、生体無料譲渡契約の対象が保護犬•保護猫だけでは、誰にとっても不都合な未来に進むことになるからです。
生体無料譲渡契約が行われても行われなくても、ブリーダーやペットショップへの規制強化は進んでいきます。
いつかその対象は居なくなるでしょう。そして犬猫の避妊去勢が進み、繁殖が行われなくなれば、犬種•猫種の血統維持が困難になります。
それはおそらく人にも犬猫にも都合の悪い状況で、おそらく誰もが望まない未来です。
動物には性別があります。あなたとペットとの出会いにはどちらにも産んでくれた母親と種を与えた父親がいるはずです。
それを否定するように避妊去勢が動物愛護という観点で行われているのなら、それは大きな間違いではないでしょうか?
繁殖行動は個の誕生による種の存続にとって不可欠です。
多くの個体がその中に入っていれば、より安全により健康的な個体を生み出すことが容易になりますから、ペットを飼う上で出産という選択を選びやすい環境を作ることは必要なことだと僕は考えます。
生体無料譲渡契約の目的は保護犬・保護猫に寄主を見つけるためだけでなく繁殖をより正しく安全に行うためでもありますから。
もちろん全ての犬猫に出産を強要するわけではありません。ただ多くの犬猫に出産という選択肢を与えればあらゆる点でリスクが低くメリットは大きなものになります。
ペットの誕生から生まれる深い絆のコミュニティ
どんなブリーダーでも一人当たり数頭から数十頭を管理しています。しかし家庭でなら1人が1頭と向き合うこともできるんです。多頭飼育の方もいると思いますが、家族で1頭というご家庭の方が多いでしょう。
つまりプロのサポートを受けて健康維持を考えた飼育管理を行えば、一般家庭の犬の方が良い結果が得られる可能性は高いと言えます。
そうやって出産のリスクを回避することを意識して飼育に臨めば、より健康的な飼育を心がけることになりますから、それだけでもペットにとっても飼い主にとっても良いことです。
そして愛犬•愛猫の出産に立ち会うという貴重な体験と、生まれた子犬や子猫を譲渡可能な日数までを育てるという真逆の立場を経験することもできるのです。
自宅で愛犬や愛猫の出産に立ち合い、産まれた子供たちを家族で育てるとなれば、こうなるともう愛情もひとしお。それはそれは大切に育ててくれるでしょう。
もちろんその喜びは家族の中で収まるわけがなく、職場やご友人はもちろん、SNSで日々愛情溢れる喜びのツイートや画像で拡散されて行きます。
どんな母親と飼い主がどれだけの愛情をかけて大切に育てたかは宣伝ではなく報告です。ただこの報告がどんな宣伝よりも効果的。ペットショップは労せず新規顧客獲得のマーケティングとセールスを行うことができるというわけです。
いくら優れたブリーダーでも思い通りの犬猫を作ることが出来るわけではありません。生き物そのものの力に頼っているだけなのです。
出産を無理なく行える健康的な素質を持った犬や猫を、ショップと飼い主が協力して育てて行けば、顧客自身のペットの出産から譲渡というイベントに、また別の顧客が参加して行くというエンドレスなサークルを作り上げることも可能です。
延々と続く命のリレーを見守って行く仕組みには、単なるビジネスで繁殖をしているブリーダーでは到底敵わないのです。
僕が考えるペットショップは、リスクもコストも人件費もかけることなく、ペットが好きなお客様と一緒に血縁という絆で繋がったコミュニティを形成できるという強みがあります。
もちろん生まれた命に金額という数字の評価などしません。純血種の血統維持や希少種の保護と向上に、より多くの人が関わって行く。そこには今のままでは得難い経験があります。
そしてリスクを犯して親になってくれたペットには、生まれた子犬や子猫の誕生を与えてくれた報酬として、飼育のサポート期間の延長をします。
金銭ではなく一定期間のフードとトリミングの提供を行うことはショップ側の負担が軽いのは言うまでもありませんね。
そして産まれた子犬や子猫はペットショップやサロンの新たな顧客に迎えいれて貰うことになりますが、長く健康的な飼育は約束されていますから、譲渡する側も安心できるはずです。
犬猫の室内飼育が当たり前になり生まれた変化
ここ10~20年の間にペットを取り巻く環境は大きく変化してきました。
ペット三大革命とでも言いましょうか、ペットフードが一般的に広く普及し、飼育環境は屋外から室内へと移り、避妊や去勢が当たり前に行われるようになりました。
食生活と飼育環境の向上は犬猫にとってもメリットがあることですから、多少の問題点はあるにしても喜ばしいことです。
しかし、こと避妊・去勢に関しては完全に人の都合によるもので、動物にとってのメリットは全くと言っていいほどありません。
現状では避妊や去勢をすることも必要かもしれません。ただ理想的な犬猫の為の環境とは言い難いと思いますし、そのことに疑問を持たないのであればあまりにも悲しい現実です。
一般家庭で飼育する上で避妊・去勢が必要不可欠となり、出産そのものが犬や猫に負担を強いる行為と認識されていけば、ブリーダーの規制もますます厳しくなりそうです。
犬猫の出産頭数が減って行けば人と同じように高齢化社会が構築されますが、寿命から考えればそのスピードは約6倍。あっという間に深刻な問題に発展するでしょう。
数が激減すれば希少性の高い種類の安全な繁殖など出来るわけがありません。
ペットを迎えるのは難しい状況になります。
愛犬家愛猫家はもちろんペット業界で仕事をする立場の僕やブリーダー、訓練士、トリマーや獣医師なども転職を考えなければならなくなるでしょう。
もちろん犬猫に父親•母親になる意思があるのかと聞かれれば確認することは出来ません。しかしその行為が自然に行われるように性別があり繁殖行動が行われるのは事実です。
その犬の都合に合わせて人がコントロールすることは悪いことではないと思います。
愛犬や愛猫の生涯は人に比べてあまりにも短く、生まれてから死ぬまでの一生をどう過ごすかを身をもって教えてくれる存在です。
必ずいつか別れが来ます。だからこそ出会いは特別なものでしょう。一頭一頭が飼い主にとってかけがえのない存在です。
今同じ時間を共に生きる愛犬や、これから迎える愛猫には必ず両親がいます。繁殖という行為を否定すればその出会いもなかったことになります。
避妊・去勢も繁殖も0か100かという話にはできません。
人の都合を無視して犬猫を自由に繁殖行動を行えるようにすれば、今までにないトラブルが増えたり飼育ということ自体にも矛盾が生じる結果になってきます。
結論から言えば繁殖という問題を完全に解決することは不可能です。人の数だけ考え方の違いがありますから。
でもその持って生まれた性別を活かすことを前提に、健康管理や飼育環境を整えていくことが問題解決に繋がると僕は信じています。
思えば人と犬の抱える問題は、時代ごとに変化はあるもののとても良く似ています。
日本だからできる理想的な共生の形を創るために
以前ブログでもスウェーデンの避妊・去勢事情について触れました。
日本の愛犬家の多くは現状のペットを取り巻く環境をドイツと比較されますが、ペットが動物である以上スウェーデンの考え方こそが理想的だと僕は感じました。
もちろん日本とは事情が違います。国土面積や人口密度。豊かな自然環境と生活様式は犬や猫が動物として暮らしやすい条件が揃っている国ですから。
だからドイツやスウェーデンなどの外国と比較して良いとか悪いとか議論することは無意味なことです。日本には日本の良さがありますから、人が作り上げた社会の中で犬や猫が動物らしく暮らせる未来を創っていけば良いのです。
避妊や去勢には良い面も悪い面もありますが、少なくとも動物が自ら選ぶ選択肢ではありません。
手術をしてしまえば後悔しても戻すことも出来ません。
だからその前に限られた時間の中でしっかりと自分の愛するペットと向き合い、健康状態やまざまな立場の考え方や意見に耳を傾けて欲しいのです。
そうやって時間と愛情をかけて悩みながら出した答えなら、正しいかどうかは別としても間違いない答えです。
出産をするしないに限らず、可能な状態に犬猫を維持しようとすることはとても健全で、お互いにとって有意義な事と思います。
この提案はあくまでも僕個人の考えです。
人に押し付けるつもりはありません。でももしあなたが賛同していただけるなら、その一人とペットのためにより良い未来を迎える準備に全力を尽くします。
縁があって迎え入れた犬や猫を家族として扱う事に異論はありません。しかしかわいいやかわいそうが動物の持つ可能性を奪っている気がしてなりません。
ペットは人間ではなく動物であることは事実で、きっとこの先も変わることはないからです。
人が人でない動物を育てることはとても難しいことなんです。しつけや扱いが不適切であれば飼い主との関係性は不健全なものとなり、分離不安や問題行動を起こすことに繋がります。
だからこそ、人とペットの距離感を正す意味でも出産を意識した飼育とその機会を持つべきだと思います。
もし愛する家族に新しい命の誕生という機会を与えられるのであれば、それはとても喜ばしい事ではないでしょうか。
人の意思によって与えられた相手と子をなすことはペットの望みではないかもしれません。それでもきっとあなたの家族は、生まれてきた我が子に愛情を注ぎ献身的に育ててくれるはずです。
あなたとペットが出会えたように、また誰かにその素晴らしい体験を紡いでいきましょう。
そうやってペットの一生を見送り、またその子供たちと人生を共に歩むという選択が当たり前にできる事が僕にとっての理想です。