月とうさぎ
私たちは簡単だった。
私たちが惹かれ合うのは簡単だった。
月の中でうさぎが遊ぶように、雪の中で犬が駆け回るように、冬に夏を求めるように、夏に冬を求めるように、私たちは単純にそして正しく惹かれ合い求め合った。受話器よりも近くに顔を置き、枕より多く涙を拭った、日記よりも秘密を知り、愛してると言うよりももっと小指を結んで歩いた。
私たちには言葉も季節も要らなかった。
おでことおでこを合わせれば言葉がほっぺたのような太ももに顔を寝かせれば気持ちが分かるから。
一緒にいるだけで熱くなったり悲しくなったり優しくなったり時には冷たくなれたから。
これからも私は寒い日には君を想い、暑い日には君を疎ましく感じるでしょう。
そんな生活を歩幅が変わってしまうまで続けられますように。
早くこの夜を通り越し君の小指に触れたら全てを諦めたい。