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偏ったままのコントラストから色鮮やかなグラデーションへ
13歳の頃の頭のいい翼くんのときから、32歳の今に至るまで本を読むことをやめていた。
子どもの頃に本を読んでいたので、知識にとても偏りがあったとおもう。
特に好きだったのはミヒャエルエンデと芥川龍之介、宮沢賢治、夏目漱石、、、ミヒャエルエンデはドイツの作家だが主に日本の文豪たちに脳みそをいじられていた。
おれと会う人の中には「よくグレなかったね」のように声をかけてくれる人がいる。
いろいろな理由があるけれど、そのひとつが自分の中に確固たる世界を築き上げていたところにあると思う。
おれは子どもの頃から自分の決めた道は踏み外さないという頑固な一面があり、それが母親の帝王学の成果でもあり一時的に親子の確執を産む結果にもなった。
その精神性に至るまでに、子どもの頃からずっと本を読んでいたことも関係してきたと思う。
芥川龍之介、夏目漱石、宮沢賢治。
ミヒャエルエンデ、マークトウェイン、サン=テグジュペリ、ヴィクトルユゴー。
これらは自室の本棚のお気に入りだったので、子どもの頃に何度も読み返した。
畳一畳分ほどのスペースで台所の方から漏れてくる灯りを頼りに、母親と父親のいがみ合う声をかき消すように文学の世界へ飛び込んだ。
物質を超えた精神の世界に真の自由があることを感覚で理解していた。
だけど、おれはまだ子どもだった。
家庭が不安定な状況のなか、どれだけ強く自分を保とうとも子どもに見えている世界はあまりにも狭かった。
おれを育てた母親の意思を、直美の帝王学と名付けているが
胎教からはじまり、知ることが楽しいということを心から理解させてくれた。
好奇心をひたすら伸ばしてくれた。ありとあらゆる情報を吸収して学ばせてもらった。
ただ、これには弊害があった。
どうしてかというと、周りと明らかにペースが違うことで不安になる。
そこに上手に寄り添って歩みを止めないように気付きを与えることが親の役割ではないかと今では考えるのだが、直美はひたすら鋼の精神をおれに説き続けた。
他人は他人だ!気にするな!
あなたが正しい。
わたしの言ってること以外信用するな!
そりゃ、ど正論だ。
ひとりの人間として、おれのカーチャンは間違ったことは言っていないと思う。
そのくらい考え方の影響を色濃く受けている。
そのおかげでいまの人格があると思っている。
ほんとうに子どもの頃は気持ちが大変だったが、母親の気持ちもちゃんと理解していた。
夫であるおれの義理の父と意思の疎通がうまく出来ず苦しみ、アルコール依存症になっている母親を見て、心底悲しかった。
本当のあなたを知っている。
おれは、ずっと信頼し続けていた。
糸が切れたのが13歳のころ、生活がなりゆかなくなった。
親父と母親を繋ぐ糸が切れ、アルコールに依存する母親を横目に5歳の弟とおれは食事もロクに与えられず盗みをして腹を満たした。
たとえば家出をして誰かの家に泊まると、誘拐犯になる可能性があることを知っていた。
家に帰りたくなかった。
公園の遊具や、マンションの非常階段などを転々として決して補導されないように立ち回った。
狭い世界のなか、必死でひとりで生きていこうと立ち上がった。
家に弟を置いてきてしまったが、母親もいれば何とか生きてはいけるだろう。
クッセェクッセェみすぼらしい服で、道行く人から変な視線を浴びたりもしたが、なんでもなかった。
1人で生きている気になれて、とても誇らしかった。
気分はトムソーヤーだが、家がないのでハックルベリーフィンのようだ!などと自分を笑い飛ばした。
だいぶ話は逸れたけど、別に誰のことも悪く言うつもりはなくて。
不安定になったときには支えてくれる人がいないと、とても大変だということ。
だからこそ、自分自身の精神を安定させることが重要なのだと。
20歳ごろに体調を崩し、統合失調症と診断されてからも大変長いこと自分を見失ってしまっていた。
考えに考えを塗り固めた結果、とてつもなくヘンテコに絡まり合った糸のようにほどけなくなり、結果的に多くの他人を苦しめてしまった。
ひとつひとつ紐解いて行ったときにほんとうに自分が大切にしているものが見えた。
最近沖縄に引っ越してきた。
すぐに図書館に行ったのだけれど、本の山を目にし、全身の毛が逆立ち感極まって涙が止まらなくなってしまった。
何度も掬い上げようともがいては沈んでいた自分の心をようやく救うことが出来た気がする。
前に進むことはもちろん重要だと思う。
けれども過去への執着がおれをいまここまで引き戻してくれ、いままで自分を縛っていた鎖を引きちぎり、苦しみから解放されることが出来た。
白か黒かになってしまった世界を、他のことで誤魔化して一時的に忘れることはできたけれど。
ことある毎に自分自身から生え続けるトゲが、周りを傷付け、自分を傷付け、本来の目的と態度があべこべになってしまっていたことに気付けた。
白か黒かの偏ったままのコントラストから、もっと境界線がぼんやりとして、それでいて鮮やかなグラデーションを描いたときに見えてきた軌道。感情の矛先をしっかり見据えて前進してゆきたい。
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