きのこのたまご
知人の竹林でキヌガサタケ情報を得て、拾ったたまご(菌蕾)
一つ持ち帰らせてもらうことに。
湿らせておけばきのこが出てくる可能性もあるらしい。
赤紫色で弾力があり、見た目よりもずっしりとしている。
全体的に赤みがあるのでアカダマキヌガサタケなのかな。
ボウルに濡れたティッシュを敷いて置いてみる。
毎日確認するも、ほとんど変化がない。
4日ほど経つと、すこし皮が浮いたシオシオした感じになってきたので、
これはダメなのかな。と思っていたら
5日目の夜、きのこが出てきた!
他で見た情報だと、グレバの部分から出てくるはずなんだけどこれは基部?
動画やタイムラプスで撮影したいなと試行錯誤するも、三脚がないし、夜間なのであきらめ、そのままにしておく。
朝起きてみるともうこのような状態に。頭の部分は重く、柄は中空でもろいので移動するのには慎重に扱う。首が座る前の赤ちゃんのように。
たまごからレース(菌網)が少しのぞいているのが愛おしい。
そしてたまごが割れてから結構くさい。
今日は土曜日だけど、出勤日。
安住の地から連れてきてしまった罪悪感と、もちろん成長を見逃したくない気持ちで、職場へ持っていくことを決意。
幸いオフィスには自分一人の日なのだ。
ボウルのままビニール袋に入れ軽く口を縛り、それをさらに大き目の紙袋に入れて持参する。
なにしろもう強烈なにおいを発してきているから。
デスク脇に安置して、乾燥防止の為ビニールを掛ける。
ちょくちょく覗いてみると、見るたびレースは広がってきている。
動物の出産を見守るような気持ちでつい頑張れと声をかけてしまう。
セロハンテープの台などオフィス用品を活用してタイムラプスも撮影してみた)
しかしここからレースのひろがりが止まってしまう。乾燥のせいかなと思い、水分を与えたりしても変化がない。
いろいろ検索してみると、やはりたまごは基部に残り、グレバの部分が突き破るのが正常のようだ。
つまりこれは逆子のような状態なのではないだろうか。
これは人の介入が必要だと、卵の部分の薄皮を指でめくると一気にレースが開いた。爪にはゼリー質とか粘液とかが入ってしまった。
ひとしきり写真を撮り、ねぎらいの言葉をかける。
窓とドアを開けて換気していてもにおいが充満し、
人のいる階下へも届きそうな勢いなので、これでまた封をし、車に戻す。
傍から離れてもなんだか興奮が覚めず、うれしさとさびしさとと
いろいろな感情がめぐる。
この感覚はあのにおいとともに記憶に残るんだろう。
この後どうしようか思案した結果、できるだけ新鮮な状態のまま
元居た場所に戻すことにした。
繁殖のためにたまごから出たこの子の労力を無駄にしたくない。
感動をありがとう!来年も会いに行くからね!