面接はマナーの試験ではありません
面接を初めて受ける人にとっては、どのようなマナーを身につけているべきなのか心配かもしれません。
そこで、細かいマナーについて気を配る前に、面接でのマナーについてどう考えておくべきかについて説明します。
面接選考はマナーの試験ではない
まず大前提として、はっきりわかっておいていただきたいのは、「面接はマナー試験ではない」ということです。
面接試験は組織の一員として貢献してくれそうな人材を選択するための方法でありその人物の中身を判断しようとしているものですからこれは当然のことです。
模擬面接をしていると、非常にマナーを気にする人がいます。そして、練習の多くをマナーの実践に充てるような人もいます。確かにマナーは練習すれば身に付くので、成長を実感できるのかもしれません。
就職や公務員の予備校などでは、面接対策を行う際、マナーの指導に多くの時間を割くところがあります。模擬面接を受けても、マナーに関する指摘ばかりされたという経験のある人もいるかもしれません。
率直に言えば、マナーを教えるのは非常に「楽な仕事」です。マニュアルに従って間違いを指摘し、修正すれば成果が出たように思えるので、たとえば予備校の新人教務職員などでも指導することはできるのです。
しかし、繰り返しますが面接試験はマナーの試験ではないのです。マナーを完璧に実践できても、それだけで面接選考を通過することはありえません。
もちろん、マナーが「悪い」と評価されればマイナスですので、それを防ぐ必要はあります。しかし、ただそれだけのものです。まずはマナーとはその程度のものだと認識しましょう。
マナーを面接官の立場で考えてみる
マナーは誰に対して必要なことなのかといえば、当然、対面している面接官に対してです。したがって、マナーについて考えるときには、面接官の立場に立ってみることが有効でしょう。
非常識すぎる人はイヤだ
面接官の立場からすると、あまりにも常識はずれな行動をする人には悪い印象を抱くでしょう。たとえば、入室時にドアを乱暴に開け閉めし、お辞儀もせずに勝手に着席してしまうような人がいたら、「あれれ?」と思うことでしょう。「常識のない人だ」、「場に合った行動ができない人だ」という印象を持たれます。そうなれば、その人の能力や実績などを知る前に、「組織に入れることはできない」と結論づけられます。
また、まともな敬語も使えず、質問に対して「え?なんすか?」などと答えれば、舐めた態度だと思われます。ここまで極端でなくても、面接官に対して敬意のある態度をしないのであれば、組織に入れても周囲や上司に対して同じような態度を取るのだろうと推測されてしまいます。
面接官は、マナーを採点しているわけではありませんが、「敬意をもった丁寧な態度」をしているのかどうかは最低限のラインとして評価しています。したがって、相手に敬意を示すような挨拶や礼、立ち居振る舞いなどは最低限必要だということになります。
マナーが完璧でも加点されるわけではない
では、一方で、完璧な立ち居振る舞い、言葉遣いで、いわゆる「マナー講師」が採点しても「満点!」になるような人ならどうでしょうか。
もちろん、完璧なマナーを実践している姿を見れば、面接官は「とてもきちんとした人だな」という印象を抱くことはあるでしょう。
ただ、「マナーが最高!よし採用!」とはなりません。どんなに完璧にマナーを実践できていても、その人の人材価値とは直接関係ないからです。マナーが完璧でも中身が空っぽなら、採用後に役に立ってもらうことはできません。
つまり、マナーで「満点」を目指す必要はないのです。「マナーの試験」なのであれば、少しのマナー違反も気にする必要はありますが、面接でのマナーというのは極端におかしなことをしない限り、評価を下げることはないのです。
マナーをいくら完璧にしても、面接通過にはつながりません。ですから、マナーのことばかり気にするのはやめましょう。
相手に敬意を払う姿勢を表す
言動は気持ちの表れ
面接官は、回答内容以外の表情や立ち居振る舞いなどから、何を感じ取ろうとしているのでしょうか。
多くの組織では、「明るい人」、「良好な人間関係を築けそうな人」、「誠実な人」といったタイプを評価します(もちろん例外はあります)。これらを示す回答内容以外の要素は、「声の大きさ」、「声のトーン」、「視線」、「体の動き」、「質問された際の表情」、「回答している時の表情」などに表れます。
このようなポイントは、細かなマナーでは表現されないものです。たとえば、「ドアを何回ノックするか」、「着席前に椅子のどちら側に立つか」などからはわからないのです。
一方、「失礼いたします」とか、「よろしくおねがいします」といった挨拶の勢いは、単純に「明るく元気の良さそうな人だな」ということを伝える可能性を持っています。あるいは、面接官が柔和な表情で話しかけてくれたときに自然と笑顔にある人は、上手にコミュニケーションを取れる人だろうと推測されます。回答途中に言い淀んでしまった際に、モジモジしないで「すみません、言い直させてください」ときちんと言えば、「誠実な人」だという印象に繋がります。
これらの好印象を与える言動は、マニュアルに従ったマナーの実践ではなく、その人の気持ちの表れです。相手に敬意を払っていれば挨拶ははっきりと元気にするでしょう。また、面接官の意図や感情を理解しようとすれば、自然とそういう表情になるものです。失敗したときも自分できちんと処理することは、相手に失礼な態度を取らない、という気持ちの表れです。
つまり大事なことは、「相手に敬意を払う」という気持ちなのです。その気持ちさえ伝われば、「ルールとしてのマナー」から逸脱していても問題はないのです。
マナーの失敗なんて気にするな
たとえば、面接練習の時には次のように決めていたとします。
ドアを開けて入室し、その場で「失礼します」と礼をする
椅子の左側に立ち、「よろしくおねがいします」と礼をする
しかし、本番では緊張して次のように振る舞いました。
ドアを開けて入室し、そのまま無言で椅子の横まで歩く
椅子の横で「失礼します」と礼をする
続けて「よろしくお願いします」と再び礼をする
予定の動きからはズレてしまい、椅子の横で、2度お辞儀をすることになってしまいました。これはダメなのでしょうか?
そんなことはありません。いずれも元気よく声を出し、きちんと礼をしています。挨拶の言葉のタイミングが少しズレただけです。そんなことで面接官はマイナス評価をすることはありません。
マニュアル通りの動きではなかったものの、面接官に「よろしくおねがいします」という本心は伝わっているのです。
こういう場面で良くないのは、予定通りの動きにならず「失敗した!」と思ったときに、小さくなったりモジモジしたりしてしまうことです。予定通りの動きでなかったことよりも、その縮こまった態度が「頼りない」という印象を与えます。面接官が、「ああ、緊張して失敗しちゃったね」と思ったとしても、「一所懸命な気持ちは伝わった」と感じてくれれば上出来です。そこでわざわざ小さくなって悪印象を与える必要はありません。
マナーは自分を落ち着かせるために
それでも、かしこまった場に出た経験が乏しい人にとって、マナーは気になるものだと思います。「自分の振る舞いはこれで良いのだろうか」と不安にオドオドしながら行動すれば、それだけで「頼りがない人」、「自信がない人」に見える可能性もあります。また、立ち居振る舞いが気になるあまり、回答を思い切りできないことがあるかもしれません。マナーが完璧でも加点はされませんが、マナーが気になって集中力が欠けるならそれはもったいないことです。
そういった不安がある人は、一通りのマナーは押さえておきましょう。そして、実際にマナーを実践する練習をしてみることです。細かい間違いを気にするのではなく、基本的に相手に敬意を払った態度に見えるのかという点でチェックします。何度も練習すれば、特に意識しなくても、自然に行動できるようになります。
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