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新しい経験に傷はつきもの? ep17

小学校までの道のりがとても遠く、校区がとても広い、生徒数が多い小学校へ通っていました。新一年生、始まったばかりの小学校生活で、一緒に下校する人を見つけるのは大変でした。


帰り道で見つけた、エリちゃんと上田君。

帰りの会で「先生さようなら、皆さんさようなら」と挨拶をして、クラスの皆は下駄箱へ向かいました。

「う~ん・・・誰か一緒に帰る人いないかな?」

キョロキョロと探してみるけど、反対方向へ帰る子ばかり。

心細い気持で家の方へ歩き出し、途中で子供会で一緒のエリちゃんと上田君を見つけました。

エリちゃんは口数が少なく、お話ししているところを見かけない子で、上田君はお調子者だけど、やはり大人しいイメージの子でした。

後ろから近づいて

「一緒に帰ろ!」
って、声をかけると、二人は顔を見合わせて微笑みあって「クック」と笑うだけでした。

まだ、小学1年生になったばかりで、3人とも、ピカピカのランドセルを背中に背負っての帰り道。


「どこへ行くの?」

顔を見合わせて笑う二人の後を、必死で追いました。
だって一人で帰るには遠いし、まだ慣れていないんだもの。

登下校時は、学校指定の通学路がありました。通学路を逸れるのは「通学路破り」と言って、子供心に、とても罪悪感があります。

エリちゃんと上田君は「クック」と笑いながら、通学路ではない道を進んでゆきます。私の心の中は不安でいっぱい。
風の音や、夕方の空の色が悲しくて心がいっぱいです。

先生が「通学路は守りなさい」って言ってたのに。悪い事をしていて、早く帰りたいよ、お母さんに会いたいよ。

「どこ行くの?ねぇ、どこ行くの?」

何を訊いても、ずっと二人は喋りません。

泥だらけになって、水たまりの道を進んでゆきます。

「靴・・・泥だらけやん・・・」

もっと心細くなるのですが、エリちゃんと上田君は泥水の中で、靴を汚しています。

「小学校へ行くからと、買って貰った新しい靴・・・泥の中なんて入りたくないよ」「もう嫌だ、帰りたい」

そう思うけれど、一人で知らない道を引き返す勇気もなく、二人の後を追って、泥水の中を進むしかありません。


二人は、有刺鉄線をくぐった!

泥水を進んで、新しかった靴は泥だらけ、頬には涙が流れ、泣きながら二人の後を追います。それでも二人は、何も話さずただ顔を見合わせて「クック」と笑いあっています。

上田君が有刺鉄線の下をくぐり、エリちゃんも続きます。

「こんなのくぐれないよ」

そう思ったけど、二人はどんどん先へ行ってしまいます。

「置いて行かないでよ」

仕方がなく「えい」とくぐったら、新しいランドセルは、有刺鉄線で引っ掻かれてしまいました。

「もう嫌だ、早く帰りたいよ」目の前は涙で見えません。

泥水の中を歩いて

靴も、靴下も泥だらけ。
新しいランドセルは、有刺鉄線に引っ掻かれて、深い傷もついてしまいました。

エリちゃんと上田君は、何も喋らず、ただ笑いあって進んでゆき、追いかけているうちに知った場所に出ました。

もう一人で大丈夫!

二人には何も言わず、そこから家まで走って帰りました。


家に帰っていっぱい泣いた

お母さんが心配すると思い、家の近くで「グッ」と涙をこらえます。

何にもなかったように帰ろうと思ったのです。

だけど、母の顔を見て「おかあさぁ~ん・・・」と、泣き出してしまいました。

母は、泥だらけの足元と、ピカピカのランドセルの傷を見て、何かあったんだろうと察して、怒らずに優しく足を洗ってくれました。


エリちゃんと上田君と一緒に帰ろうと思ったら、知らない場所に出てしまったこと、お気に入りの靴が汚れてしまったこと、ピカピカのランドセルを有刺鉄線でひっかいたこと、しゃくり上げながら、悲しい気持ちを話しました。

母は、黙って聞いてくれて、安心したと同時に、小学1年生の私は、沢山の罪の重さに、心が潰れそうでした。

・通学路を破ったこと
・新しい靴を泥だらけにしてしまったこと
・ピカピカのランドセルに傷がついた事


ただ、家に帰るだけ。
一人で帰るのが心細かったから、知ってる子に声をかけただけなのに、あふれた涙は止まりません。


ランドセルは6年間、有刺鉄線の傷とともに。

2年生になり
給食当番でシチューを持っていた時、廊下を走ってきた上田君がぶつかってきて、私はシチューまみれになりました。
またお気に入りの洋服がシチューで汚れてしまいました。

上田君は、先生に怒られて、私の家まで謝りに来ました。

その後、避けたわけではないですが、エリちゃんと上田君とは、仲良くなる事もなく、一緒に帰る事も、6年の間で同じクラスになる事もなく、わたしは引越しました。


初めての経験、成長する時、心の痛みを経験します。

いまでも、あの時の私の様に不安で心細くて泣きたい事もよくあります。

経験したことがない感情を経験する時は、周りにいてくれる家族や、友達や、いろいろみんなのあたたかさに、心から感謝する事が多いです。悲しい出来事は、私にとって、そんな温かな日常に気づくチャンスでもあります。

特別な事がなくても、幸せだと思える事が幸せです。あなたは悲しい時、誰に会いたくなりますか?


その時、その人にしか分からない辛い事も悲しい事もあります!

それは、子供が成長する時もそうですし、勇気を出して挑戦する事が、うまく行かない時も。

そして年を重ねて、今まで出来ていたことが出来なくなる時だって・・・・

あなたや、あなたの大切な人が、悲しい気持になった時。たった一人で、心を込めてお焼きしている、RÉGALCHEESECAKE(ヘガルチーズケーキ)があなたの気持ちに寄り添えますように。

機械を使わず、全て手作業で焼き上げるので、1日にご用意出来る数は、そんなに多くありません。とっても少ないです。
しっかり心に寄り添えるよう、心を込めてご用意する姿勢は、変えずに、真っすぐな手仕事を続けています。
(効率化しないなんて、時代錯誤ですが)

これからも、応援していただけると嬉しいです。もちろん、私もあなたを応援しています。

店主mumu


RÉGALCHEESECAKE(ヘガルチーズケーキ)は、生駒市のふるさと納税返礼品に選ばれています。WEBからのお買い物は24時間、承っております。

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