【H】最近の「円安」から振り返る日本経済の30年(3)バブルとその崩壊—妻に伝えたい「経済」の話③
こちらは以下の記事の続きです。
4-2、バブルとその崩壊―バランスシート不況へ
日本はバブル崩壊以降、バランスシート不況に陥っていた。バランスシート不況とは何か。
バブルにおいて、企業も個人も借金をしてまで土地や株を買っていた。借金をして土地を買い、その土地の価格が高騰する。その土地を担保にしてさらに借金をして土地を買うということが行われ、皆んながそうするから、土地の値段がどんどん上がるということが生じていた。
だが、土地価格が、このように上がるから上がるというバブル状態になって(たとえば庶民が家を買えなくなって)いることを見かねて、大蔵省が不動産投資への融資の量の規制に乗り出したことで、バブルの土地価格高騰は逆回転を始める。
さらに高値で土地を買う軍資金の出所がなくなり、土地の価格が下落を始めると、そもそもが裏付けのない高値になっていたために、どんどんと土地の価格が下落、多くの企業や個人が、抱えている借金(債務)の額に対して、現に保有している土地などの資産の価値が見合わないという「債務超過」の状態に陥った。
ここで生じたのが、このままでは不安だから何がなんでもまずは借金を返済しようという動きである。企業の本分は借金をして投資をし、借入以上の儲けを得ることなのだが、「債務超過」の状態ではそんなことは言っていられない。企業は何はともあれ借金を返そうとしたのだ。
だが、現代の「債務貨幣システム」においては、お金は借金で生まれ、借金返済で消えていく。皆んなが借金をせずに借金返済ばかりをすれば、お金が消えていき、金回りが悪くなって不景気になる。需要が足りずに物価が下がって貨幣価値が上昇するデフレが生じ、それがさらに不景気を深刻化させていく。物価が下がるなら、消費や投資を先延ばしするのが合理的だからだ。デフレは資産価格のさらなる下落を引き起こし、企業の収益も圧迫していく。
ここで現代の経済システムの根幹にある銀行にも問題が派生する。債務超過に陥った企業や個人の中には借金を返済できないところも出てきた。それは融資した銀行からすると不良債権ということになる。銀行にとって融資が返済されないことは、その分だけ自己資本が失われることを意味する。銀行自身が債務超過に陥る可能性がある。
だから不良債権を抱えた銀行は、さらなる不良債権を出さないため、融資の審査を厳格化したり、借金の回収を急いだりした。要するに新規の貸し出しをあまり行わないようにし、借金の返済を促した。それがさらに金回りを悪くし、景気を悪化させて結果として不良債権を増やし…、以下、悪循環が続くこととなった。
これが、まずは借金を返済してバランスシートを改善しようという企業の試みに端を発する不況、いわゆる「バランスシート不況」である。