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「憧れ」で職業を選んではいけないのか|第一志望を半年で辞めた話③

・①の記事はこちら↓

・前回の記事はこちら↓

これまでの話でお伝えしてきた通り、
私は「憧れ」の仕事に就くことができたが、
憧れだけでは業務はできず、退職してしまった。

それなら「憧れの気持ちは排除して冷静に職業や職場とのマッチングを考えるべきだ」
と伝えたいのかというと、そういうわけではない。

現在の日本において、どこに務めてどのような仕事をするのかということは、
非常に重大な自己実現のツールとなっている。

大きなプロジェクトを動かしたい、
自分が企画した商品を世の中に出したい、
街づくりに根幹から携わりたい。

そういった仕事内容への憧れもあれば、

大企業に入って安心したい・させたい、
給与の高いところで働いて遊びたい、
ハイステータスを手に入れて異性にモテたい。

このような職業に付随するものへの憧れもある。

さらに、現在の新卒就活に参加している学生のほとんどは、
「就職先のレベルによる勝ち負け」を、
多かれ少なかれ意識していると思われる。

各媒体が有名企業・人気企業ランキングを毎年更新していることや、
「就職偏差値」の存在を知っている大学生が一定数いることは、
そういった勝ち負けの意識の存在を明らかにしているだろう。

(この「就職偏差値」については思うことがいろいろあるので、
改めて取り上げて記事にしたいと考えている。)

そして、各々の学生によって憧れる仕事や職場はもちろん異なるが、
少なくない割合で、
「憧れの対象=就活偏差値も高い」
という等式が成り立っているはずだ。

仕事内容にも、付随する環境にも憧れる職場があって、
しかもそこに就職できることになれば、
就活は勝ち。大勝利。
達成感があるし、親戚や友達にも一目置かれる。

反対に、同時期に就活をしている友人たちよりも
ぱっとしないところに就職することになったら、
負けた気がする、自己肯定感が下がる、
なんだか自分がダサく思えてくる。

明確にやりたいことがあって職場を選んだ意志の強い学生以外は、
その職場のステータスの高低によって、
多少なりとも周りに対してこういった優越感や劣等感を抱くだろう。

このように、憧れの職場への就職が決まれば、
入社後、実際に自分が享受するメリットに加え、
「就活市場での勝ち」も会得できる。

そうでなければ、入社後のメリットが得られないだけでなく、
「就活市場での負け」を実感することになってしまう。

その事実が、憧れの対象への憧れを、さらに強めることになっているのだ。

なんなら、憧れの発端が「就活における勝ち組企業だから」という場合だってあると思う。

そして、②の記事で書いたとおり、憧れは学生を盲目にする。

その職場に憧れを持っていればいるほど、
仕事と自分の不一致に気が付かなかったり、
気づいてもなんとか乗り切ろうとしたりしてしまいがちだ。

頑張って乗り切ろうとしてしまうのが、
「憧れパワー」の為せる技であることはもちろん、
不一致に気が付かないのも、
憧れている素敵なところばかりを見てしまって、
そういう部分に目が行かなかったせい、ということが往々にしてある。

そして、ちゃんと不一致な部分が目に入って認識はできても、
すでにその職場に対して憧れのイメージを強く持っている学生は、
「小さいこと」だと処理してしまいがちである。

しかし、職場側は、憧れられそうなところを切り取って学生に伝えていて、
学生側は就活という精神闘技場でモチベーションを保つために、憧れをエンジンにしないとやっていけないのだから、
職場への憧れを強く持っている状況というのが、むしろデフォルトだ。

②でわたしは自分について、
「職場と自分についての理解を深めることを怠っていたし、
職場と自分はマッチしているのかを冷静に判断できていなかった」と
書いたが、それにはこういった背景も関係していると考えている。

仕事内容や職業に付随するものが魅力的であれば、その職場に強い憧れを持つのはごく自然なことである上に、
就活市場はそういった憧れが生まれやすく、強化までされやすい環境である。

そんな状況下で、
「憧れの気持ちは排除して冷静に職業や職場とのマッチングを考えるべきだ」
と言われても、そんなの無理。無理過ぎる。

もし、「憧れの職場と合わずに約半年で退職する」という経験をしたいまのわたしが、
この体感を持ったまま新卒就活に挑んだとしても、
憧れの気持ちを排除した職場選びなんて、絶対にできやしない。

だからわたしは、「憧れの気持ちを排除して考える」ことではなく、
「憧れの存在を加味して判断する」ことが大切だと伝えたい。

仕事内容や環境、ステータス。
さまざまなものへの「憧れ」で職業を選んだっていい。
むしろ憧れの気持ち自体は、就活を乗り切るためのエンジンとして大切にするべきだろう。

だけれど、「憧れ」の持つ負の面にもきちんと目を向けることが必要だ。

・憧れだけでは、業務はできないこと
・憧れによって、不一致に意識が向きづらくなること
・憧れは、就活市場において強化されやすいこと

これから就活を迎える人のうち、
進みたい方向が決まっていない人や迷っている人には、
ぜひ、これらを念頭に置いて考えた上で、
さまざまな就職先を比較検討してほしい。

もしかしたら、「憧れの職場で働いている自分」という事実を燃料にして業務を頑張れるのは、
短い間だけかもしれない。

もしかしたら、憧れによって今はなかなか目に入っていなかったり、小さいことだと判断したりしている不一致は、
仕事を続けられないと感じるような致命的なものかもしれない。

もしかしたら、憧れの理由ともなり強化も行う「就活の勝ち」には、
人生をいま自分が感じているほど大きな価値はないかもしれない。

そうやって、「憧れ」の存在とそれが生み出すものたちに向き合った上で、
自分の一生涯を考えたときに最善だと思う選択をしてほしい。

では、向き合った結果、
「辞めることになるかもしれない。でも、挑戦してみたい」と思ったら。

または、就活直前や就活中で、
「いまさら方向転換することは難しい」という状況だったら。

わたしは自分の新卒就活のときに、
そういった向き合い方をすることができていなかったため、
自分が入ったあと短期間で離職する可能性について考えていなかった。

しかし、向き合えた人には向き合えたがゆえに、
「ある程度短い期間で辞めることになるかもしれないけど、挑戦する」
ということに対して、悩みや葛藤が生まれるのではないかと思う。

次回の記事では、この選択を取ることに関して、
多角的な視点から論じたい。

・次回の記事はこちら↓


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