なぜ「新型コロナウイルス対策専門家会議」に議事録がないのか?
厚生労働省のホームページを見ると、膨大な数の「審議会・研究会」が開催され、その多くに綿密な「議事録・資料」が添付されている。几帳面にPDFファイル化され、キーワードでの検索も可能で、便利な仕組みである。
「第22回アルコール健康障害対策関係者会議」議事録
たとえば、新型コロナウイルス感染の拡大を受けて全国の学校が休校措置になっている最中、2020年3月18日の15時から17時まで「第22回アルコール健康障害対策関係者会議」が厚生労働省専用15会議室で開催された。12名の委員と5名の参考人が出席して、マジメな討論を行っている。その議事録は、次の35ページにおよぶPDFファイルで掲示されている。
ここに適当なページから一部分を抜粋してみた。愛媛大学教授の小佐井良太参考人が大学生の飲酒について説明し、「飲みサー」の現状に触れて、質疑応答が始まった場面である。私も長年大学生に関わってきた経験から、まだ未成年者に相当する大学1・2年生の飲酒にどのように対処すればよいのか、なかなか難しい問題だと認識している。
いずれにしても、新型コロナウイルスで大騒動になっている最中に、関係者が厚生労働省に出向いて会議を開き「アルコール健康障害対策」について審議し、その詳細な議事録が公開されていることは、立派な成果といえるだろう(笑)。
「新型コロナウイルス対策専門家会議」の議事録
さて、「アルコール健康障害対策」について、これだけ立派な議事録が公開されているのだから、日本政府から「歴史的緊急事態」に指定されている「新型コロナウイルス感染症対策」については、さぞかし詳細な専門家会議の議事録が作成されているに違いないと思うのが常識だろう。
ところが、そうではない。専門家会議の議事録は、存在しないのである! この「議事録を残さない」という信じ難い日本政府の「愚策」については、5月28日に「共同通信社」が最初に報じて以来、多くの政治家や法律家、科学者や研究者、ジャーナリストや知識人から、「ありえない」・「とんでもない」・「呆れ果てた」といった批判が噴出している。
専門家会議は、感染症の研究者や弁護士ら12人の専門家が政府に助言を行うための機関で、2月から5月にかけて、すでに15回の会議が開かれている。日本政府は「専門家会議の助言」によって新型コロナウイルスに対する実際の「政策」を決定しているわけだから、その重要な会議の議事録がなければ、誰が何を発言し、どのような議論の経過によって、いかなる結論が導かれたのか、後に検証の必要が生じたとしても、まったく参照できない。
西村康稔・新型コロナ対策担当大臣は、記者会見で、「専門家の立場で、自由に率直な議論をしてもらうことが大事であり、そうした観点から、1回目の会議で、発言者を特定しない形で議事概要を残すことを説明し、理解をいただいている」と述べている。
逆に言えば、この会議では、発言者を特定すると「自由に率直な議論」ができないのだろうか? あるいは、会議のメンバーは、自分の発言に責任を持てないのだろうか? もしかして、匿名でなければ話せないような「表に出せない」話をしているのだろうか?
そもそも、この会議は、ウイルス感染症対策に関わる純粋に科学的・法律的な議論を行っているはずである。それにもかかわらず、「表に出せない」話があるとしたら、どんな内容だろうか?
たとえば、「高いハードルを設けて、国民にPCR検査を簡単に受けさせないようにしましょう」とか「外国に、日本のウイルス起因の死亡者数を減らして見せ掛けるために、死亡証明書の病名を工夫しませんか」とか「人工呼吸器は、若年齢層に優先的に使用するように病院に指示すべきでは」といった、倫理的に問題のある「助言」でも議論しているのだろうか? まさかそれを隠すための卑怯な手段だとは思いたくないが、議事録を出さないようでは、そのように勘繰られても仕方がないのではないだろうか?
専門家会議のメンバーの中には、議事録作成・公開を望む声もあるという。さらに、実は、すべての会議の録音記録を保持しているメンバーもいるらしい。ぜひ研究者・科学者としての良心・倫理観にしたがって、政府から独立した形式で構わないので、「歴史的緊急事態」の全議事録を公開していただきたいものである!
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Thank you very much for your understanding and cooperation !!!