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「アベノマスク」企画の「お花畑」現象!

通信社ブルームバーグは、「『アベノミクス』から『アベノマスク』へ:日本政府のマスク計画が物笑いの種になっている」(From Abenomics to Abenomask: Japan mask plan meets with derision)と伝えているという。

いかに「布マスク2枚の配布」が世界で嘲笑されているか、次の井津川倫子氏の記事を読むと、よくわかる。

井津川氏の解説にあるように、アメリカで「derision」といえば「あざ笑う」という意味。私の感覚では、「冷笑」や「蔑視」を含む、かなり「侮蔑的」な表現である。

「アベノマスク」企画者の記事!

さて、「政府マスクチーム」で企画に携わったという浅野大介氏が、昨日、FACEBOOKに「マスク2枚の真相」というタイトルの記事を投稿した。浅野氏の現在の肩書は、経済産業省商務・サービスグループサービス政策課長・教育産業室長である。「小学校でのプログラミング教育必修化」を推進している人物でもあるらしい。


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おそらく、浅野氏は、このようにフランクに「真相」を語れば、多くの読者から「共感」を得られると信じて「シェアしてほしい」と発信したのだと推察する。もしかすると彼は、「なるほど、マスク2枚にはそういう意図があったのか。隣近所で融通し合う戦前の『隣組』を思い出させるステキな企画じゃないか」と、人々に理解してもらえる光景でも夢見ているのだろうか?

浅野氏が、マスク騒動の「真相」を嬉々としてFACEBOOKに書き込んでいること自体、私には強烈なギャグとしか思えない。この人物は、なぜ自身のアイディアが世界から嘲笑されているのか、いまだに気付いていないらしい。「布マスク2枚の配布」が、どれだけ多くの国民を呆れさせ、安倍政権に不信感を抱かせる結果になったのか、その責任さえ感じていないようである。

まず私が愕然としたのは、この文章の日本語のレベルである。「日本の社会ってそういうの苦手じゃないはずだとおもってますんで。」という結語は、東大卒の浅野氏が、あえて国民目線からFACEBOOKらしく書いたつもりなのか? あるいは、単におチャラけているだけなのか?

記事全体を読んでわかることは、この文章の主旨が「独善的で自己満足」に満ちているということだ。彼の論法は、①紙マスクが不足している、②紙マスクは医療関係者に回したい、③国民は布マスクで我慢すればよい、④国民に布マスクを配布すればよい、⑤全国民に配るのは大変だから全戸無差別配送で各世帯に「まず2枚」から始めよう、というものである。

何よりも恐ろしいのは、こんな行き当たりばったりの短絡的な提案が、実際に、経済産業省の上層部から総理大臣まで、簡単に認可されたという現実である。この計画に費やされる税金200億円~300億円が、無駄になるわけである。私には、いよいよ日本が狂気の世界に突入し始めているように映る。

「布マスク」は、ウイルスや細菌を溜め込む。使用するたびに、周囲に撒き散らさないように注意しながら個別に洗浄消毒し、完全に乾燥させてから再利用しなければならない。これは、とくに高齢者にとって、非常に面倒な作業である。結果的に、つい使用済みのマスクを何度も使い回してしまうと、むしろ感染の可能性を高めるので非常に危険で、「殺人マスク」になりかねないことは、次の記事で述べたとおりである。

布マスクよりも紙マスクを選ぶ、選択の自由!

ここでは、別の視点から考えてみよう。そもそも布マスクは、家庭でも簡単に作ることができる。ネットを検索すれば、ハンカチやスカーフを利用して、カラフルで個性的な布マスクを作る方法が、いくらでも出てくる。だから、わざわざ日本政府に布マスクを配布してもらう必要はないのである。

たとえば、日曜日、ついにあなたの紙マスクの最後の一枚がなくなったとする。一つの方法は、月曜日の朝早くから薬局に30分並んで紙マスクを購入すること、もう一つの方法は、ハンカチとストッキングの切れ端を工夫して30分で布マスクを作ること。どちらにしますか?

どちらでも自由である。ここで何よりも重要なのは、どちらを選ぶのも、完全に我々国民の自由だということである。

浅野氏の思考回路から完全に抜け落ちているのは、多くの国民が、衛生的で効率的な「紙マスク」を求め、不衛生で非効率的な「布マスク」を求めていないという単純明快な真実である。要するに、「紙マスク」は好きだが「布マスク」は嫌いだという人が、たくさんいるのである。その個人の嗜好性に対しては、どんな官僚であろうと大臣であろうと、決めつける権利はない。

したがって、日本政府が国民の期待に真摯に応えようとするのであれば、あくまで正攻法で、使い捨て「紙マスク」の増産あるいは輸入を支援し、医療従事者はもちろん全国民に「紙マスク」が行き渡るように力を注ぐべきなのである。そもそも安倍首相が、2月29日の緊急記者会見で紙マスクは「十分な供給が確保できます」と確約しているではないか!

また税金200億円~300億円の使途という観点からは、「布マスク」などよりも、不足している最優先医療器具の「人工呼吸器」や、自粛要請によって本当に困っている国民への救済を優先すべきであることは、明らかだろう。

それにもかかわらず、浅野氏をはじめとする優秀な官僚40人を集めたという「政府マスクチーム」は、首相に「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますから」と進言したという。つまり、布マスクさえ配っておけば、国民は従順に何度も洗浄消毒して再利用し、紙マスクのことは忘れ去るだろうと、彼らの脳内で「お花畑」を夢見ているというわけである。

さて、その浅野氏と「政府マスクチーム」を裏切ったのは、なんと首相本人だった! 安倍首相は、4月1日から、国民に配布するのと同様の布マスクを使用していたが、4日に官邸入りする際には、紙マスクを着用していた。彼らの企画の宣伝係である首相でさえ、「紙マスク」を選んで「布マスク」着用は三日坊主で終わった、というオチである(笑)!

ここで疑問に思うのは、浅野氏をはじめとする「政府マスクチーム」のメンバーが、今どんなマスクを着用しているのか、ということである。発案者であり推進者である以上、彼らは皆「国民に配布するのと同様の布マスク」を着用しているはずだ。まさか「紙マスク」を着用してはいないと思うが、果たしてどうなのか? ぜひ、心あるジャーナリストに取材をかけてほしい!

[2020年5月27日追記]

安倍首相は4月1日~3日まで「アベノマスク」を着用、4月4日に「不織布マスク」を着用、4月5日以降は再び「アベノマスク」を律儀に着用し続けているようである(笑)。この点については、下記の記事も参照してほしい。

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高橋昌一郎
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