「論理的思考法」クイズ!【第12問】「反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対しています」
政治家発言の「コント」
日本の政治家は、いつから「お笑い芸人」になったのだろうか? 彼らの発言を聞いていると、まるで「コント」である。コメディアンが観客を笑わせようと意図しているのであれば理解できるが、彼らは国会や委員会や記者会見において公式声明を発しているのである。もはや、幼い子どもたちからさえ、大笑いされるレベルではないか!
読者は、次の発言をどのように思われるだろうか? その発言のあった状況を改めて確認した上で、なぜ「コント」になるのか、どこまで非論理的なのか、いかに日本語が破壊されてしまっているのか、自分自身の頭でよく考えて、発見してほしい。「論理的思考法」のよい訓練になるはずである。
「反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対しています」
2021年7月、安倍晋三・前首相は、月刊誌『Hanada』8月号における櫻井よしこ氏との対談で、「極めて政治的な意図を感じざるを得ませんね。彼らは、日本でオリンピックが成功することに不快感を持っているのではないか。共産党に代表されるように、歴史認識などにおいても一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対しています。朝日新聞なども明確に反対を表明しました」と述べた。
その前提として、次のような状況があった。そもそも安倍氏は、2012年12月の内閣総理大臣就任以来、「2020年東京オリンピック招致委員会」の最高顧問として、オリンピック招致活動の先頭に立っていた。
2020年8月29日付『東京新聞』には、「安倍首相が関わり、五輪そのものが変わった。政治色が強まった」と、オリンピック招致活動そのものが政治的に「変貌」した様子が指摘されている。
2013年の国際オリンピック委員会(IOC)総会では、安倍氏は、福島第一原発事故に対する処理が国内で大問題になっていたにもかかわらず、「状況はコントロールされている」と世界に向けて発言した。
日本オリンピック委員会(JOC)の元理事は、「五輪は開催都市が主導するもの……だが、東京五輪は節目節目で安倍首相という一国の長(おさ)が前面に出てくる。異例のこと」と証言している。
2016年のリオデジャネイロ・オリンピックの閉会式では、安倍氏がゲーム・キャラクターの「マリオ」に扮して登場した。JOCの元理事は「明らかなスポーツの政治利用。そこまで出たがりなのかと驚いた」と「冷めた口調」で振り返ったという。
新型コロナウイルスの感染拡大により開催が危ぶまれた2020年3月には、安倍氏がIOCのトーマス・バッハ会長と直接電話で協議して、大会の1年延期で合意した。
この「合意」も、東京都やJOCは置き去りにされ、安倍氏が主導した結果だった。JOCの幹部は「何としても(2021年9月までの)任期中に五輪をやりたかったのだろう。話し合いや相談をされることなく決まっていた」と、取材に答えている。
2020年8月28日、安倍氏は、病気のためと、内閣総理大臣の職を辞任した。JOCの幹部は「1年延期は安倍首相が交わした約束。ここで辞めるとは……。いざという時に誰が決断し、誰が責任を取るのか」と危惧していた。
論法:「五輪反対は反日的」=「戦争反対は非国民」
要するに、東京オリンピックを強引な政治力で招致し、新型コロナウイルスに対する確固たる見通しもなく開催の「1年延期」を決定し(2年延期ならば「先見の明」を褒め称えたのに……)、さらに突然辞任した張本人が、安倍氏という人物なのである(笑)。
その安倍氏が、今では病気も回復したのか、東京オリンピックへの反対意見に大いに立腹している。新型コロナウイルスに文句を言うわけにもいかないだろうから、誰かに八つ当たりしたくなる気持ちも理解できなくはないが、少なくとも日本の前首相が「反日的」という言葉を使って日本国民を非難し分断させるとは、とても理性的な姿勢とは思えない。
そもそも「五輪反対は反日的」と決めつける論法は、「戦争反対は非国民」と決めつけた戦前の論法とまったく同質の非論理=「白黒論法」である。
論理的に整理すると、「五輪反対」と「反日的」という言葉を使う際には、次の4通りの組み合わせがある。
①「五輪反対」かつ「反日的」
②「五輪反対」かつ「反日的でない」
③「五輪反対でない」かつ「反日的」
④「五輪反対でない」かつ「反日的でない」
このように4通りの組み合わせがあるにもかかわらず、①か④の2通りしか見えない(見ようとしない)のが「白黒論法」である。
おそらく、安倍氏はご自身は④だと信じ、共産党と朝日新聞は①だと信じているのだろう。しかし、実際に最も多くの国民が相当する②は、彼の思考のカテゴリーに入っているのだろうか? また、五輪に賛成しながら実際には大失敗を願っている③のような真の「反日」勢力も忘れてはならないカテゴリーである。
安倍氏といえば、街頭演説で「帰れ・辞めろ」コールを浴びた際、「こんな人たちに皆さん、私たちは負けるわけにはいかない」と叫んだことがある。その際にも、彼の脳内には「こんな人たち」という「敵」と自分の「味方」のどちらかだけしか見えていなかったのではないか?
なぜ安倍氏は、これほどまでに短絡的な「白黒論法」に陥ってしまうのだろうか(笑)?
ヒント:「戦争反対は非国民」・「短絡思考」・「白黒論法」
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