なぜコロナ対策交付金が「巨大イカ」に化けたのか?
海外ニュースが報じた日本の「巨大イカ」
テレビで BBC を見ていたら、日本の町が「relief money」(災害義援金)で「giant squid statue」(巨大イカの彫像)を造ったというニュースが流れてきた。YouTube に挙げられている The Star(Reuters)の映像では、背景に流れる "playful music" が笑える。
コロナ対策交付金2500万円を「巨大イカ」に使用
このニュースを調べてみたところ、国内では『中日新聞』が記事にしていた。2021年3月末、石川県能登町の観光交流施設「イカの駅つくモール」に完成した「巨大イカ」のモニュメントで、高さ4メートル・全長13メートル・幅は最大9メートル・重量は5トンだという。観光の目玉であり、写真撮影スポットになるように、夜にはライトアップするそうだ(笑)。
設置に掛かる経費は3000万円で、能登町が500万円を負担し、残りの2500万円は「新型コロナウイルス感染症対策」を目的に国から支給された「地方創生臨時交付金」を財源とする。この予算案については、2020年7月の能登町議会で可決された。
以前の記事を検索してみると、この企画そのものに能登町民から疑問の声が上がっていたことがわかる。2021年2月3日の「北陸中日新聞WEB」は、次のように述べている。
住民「今、必要か」 町「終息後 誘客期待」
石川県能登町の観光交流施設「イカの駅つくモール」で、町が設置を進めるスルメイカの巨大モニュメント。新型コロナウイルス感染症対応として国が自治体に配分する地方創生臨時交付金の約二千五百万円が充てられることに、一部町民から「感染症対策の効果があるのか」との声が上がっている。町は特産品のスルメイカPRを念頭に「コロナ終息後を見据えた誘客効果が期待できる」と理解を求める。……
「長い目では誘客効果があるかもしれないが、医療従事者や介護施設などコロナ禍で差し迫った支援が必要なところに手厚く使う道もあったのでは」。町内の六十代女性は今回の設置に反対する。四十代男性も「地方創生という意味で観光振興という使途は間違っていないが、住民らから広くアイデアを募る方法もあったはず」と残念がる。……
町ふるさと振興課の担当者は、国が示した活用例のうち「地域の魅力の磨き上げ事業」に合うと説明。「イカの町や九十九湾の観光振興は、過疎化が進む町の交流人口拡大に向けた切り札。外国船違法操業の影響でスルメイカの不漁が続き、感染症で魚価下落の打撃も受ける小木港を支えたい思いもある」と明かす。
そもそも国が地方に支給する「地方創生臨時交付金」の目的は「新型コロナウイルス感染症対策」である。その財源で「巨大イカ」のモニュメントを造ることに違和感はないのだろうか? 何よりも優先されるべきなのは医療・介護施設の充実や迅速なワクチン接種ではないか? この「巨大イカ」に合計3000万円の税金を費やす価値があるのか?
さらに、「北陸中日新聞WEB」は、「地方創生臨時交付金」の活用法を巡る問題が、能登町ばかりではなく、各地で生じていることを報道している。
国の交付金使途 各地で是非 中止求める署名も
コロナ対応の地方創生臨時交付金を巡っては、各地で活用法の是非が問われている。千葉県白井市は、市内の公園三十九カ所に感染症対策への協力を呼びかける看板設置費に約三千万円を充てる予算を昨年十二月の市議会に提案し可決。しかし「不要不急。医療従事者支援など他に使い道がある」と反対する市民らのグループが中止を求める千九百五十九人分の署名を市に提出している。
昨年十一月、財務省は財政制度等審議会の分科会に、国が示した活用例以外の「ユニークな」取り組み例としてごみ袋配布、花火大会開催、スキー場のライトアップ、ランドセル配布、公用車購入、駅前広場への屋根設置などを列挙した。分科会では有識者から「地方議会がチェックを果たすべきだ」「適切に使われているか検証が必要」などの意見が相次いだ。
終了後の会見で分科会長代理の増田寛也元総務相(元岩手県知事)は「コロナに便乗した使い方に見える。巨額歳出の背景をくみ取り、本来的にやるものと区別すべきだ」と発言し、議会などで十分議論するよう促した。
さて、読者はこの問題をどのようにお考えだろうか? 「地方創生臨時交付金」を「コロナ終息後」を想定した企画の財源としてよいのか? 「巨大イカ」を造った能登町の発想を容認されるだろうか? 実際に、この「巨大イカ」を観に行きたいだろうか?
少なくとも、海外メディアは、日本人のやること(この企画を推進した人々ばかりでなく、反対せずに容認した人々も含めて)を「唖然」として「理解不可能」だと「嘲笑」して報じていることは、認識しておくべきだろう!
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