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すでに東京はエピセンター化したのか?

新型コロナウイルスに対する「危機感」!

今日から20日前の7月16日、参議院予算委員会において「新型コロナウイルス感染症への対処等」に関する集中審議が行われた。参考人として登場した東京大学先端科学技術研究センター名誉教授の児玉龍彦氏は、「私は今日、極めて深刻な事態を迎えつつある東京のエピセンター化という問題に対して、国会議員の皆様に全力を挙げての対応をお願いしたくて参りました」と最初に述べた。

児玉氏によれば、新型コロナウイルスの最大の問題は、単に感染の「クラスター」(集団)が生じることではなく、変異したウイルスが「エピセンター」(震源地)を形成することにある。東京では、第一波(武漢型)と第二波(イタリア型)が発生した後、すでに第三波(東京・埼玉型)が発生している可能性を言及した。もし第一波・第二波の段階で大規模なPCR検査を実施し、無症状の感染者もチェックしておけば、この状況は抑えられたかもしれない。しかし、日本政府も東京都も、積極的な対策を実行しなかった。

いったんエピセンターが形成されると、無症状の感染者からの感染が急激に増加し、死亡率は一見低く見えていても、時間が経過するにつれて、その割合は増加する。児玉氏は、「総力で対策を打たなければ、来週は大変なことになる」・「来月は、目を覆うようなことになる」・「東京が、ニューヨークのようになる」と強い「危機感」を表明し、「責任者を明確にして、トップダウンで前向きの対応が必要」と、大規模なPCR検査などの積極的な対策の必要性を強調した。

児玉龍彦教授の国会提出資料

要するに、児玉氏によれば、7月の時点で、すでに東京にはエピセンターが発生し、「悪循環サイクル」に入ってしまったのである。その認識は、児玉氏が国会に提出した資料(1)に明示されている。

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さて、児玉氏のグラフは7月10日の時点で終わっている。それから約1カ月が過ぎた。現実は、どうなっただろうか? 昨日8月6日までの東京都の新規感染者数のグラフは、次の通りである。

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このグラフの増加レベルを見る限り、児玉氏の理論が正しい確率(ベイズ理論的にも)が高まっていることは、誰もが認めざるをえないだろう。その初期状態をもたらした世界各地のクラスターにおけるウイルスの変異は、次の資料(2)のグラフに描かれている。

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次の資料(3)に示されているのは、地域がエピセンター化していく様子である。クラスターと違って、エピセンターでは「免疫不全の無症状者」が「感染源」となって、それまでとは次元の異なる感染を周囲にもたらす。

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次の資料(4)にあるように、いったんエピセンター化してしまうと、持続する無症状感染者の増加によって「空気感染」に似た感染が広範囲で生じるようになり、これまでの「感染防止ガイドライン」では防止できなくなくなってしまう。

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ヨーロッパやアメリカに比べると重症者や死者が少ないことから、アジアでは新型コロナウイルスが「弱毒化」したという楽観説も見掛ける。しかし、逆に、夏の間に無症状感染者が広がって、冬には「強毒化」して手に負えなくなる可能性も考えておく必要があるだろう。進化論的に考えると、それこそが新型コロナウイルスの生存戦略かもしれないからだ。

いずれにしても、このような状況下で堂々と「GoToトラベルキャンペーン」を実施する日本政府には、呆れ果てるばかりである! ついでに触れておくと、"Go to travel." は、実に奇怪な英語である! もし "travel" が名詞ならば "Go travel."、動詞ならば "Let's travel." が普通だろう。まさか、このキャンペーンを企画した観光庁の官僚が、そんなレベルの英語さえ知らなかったとは考えられないのだが、もしかすると「アベノマスク」を企画した経済産業省の官僚と同じように、脳内で「お花畑」を夢見ていたのだろうか?!

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高橋昌一郎
Thank you very much for your understanding and cooperation !!!