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阪神淡路大震災と運送業について
25年経った今だからこそ第二回目はこのトピックで書こうと思う。
私が目覚めたのは轟音でなく、母が覆いかぶさった衝撃であった
川の字で寝ていた私の上に轟音と共に降ってきた
母は正気を失い
戦争や!
と叫んでいた
当時神戸の六甲山上に住んでいた私は窓からの景色に怯えた
冷蔵庫がまるで生きているように動き、タンスはもうひと押しで倒れてやるぞと唸っていた
幸いだったのが眠っていた場所だがその日はたまたま母の寝室で寝ており、自分が普段寝ている子供部屋はベッドがタンスの圧で潰れてしまっていた
もし子供部屋で眠っていたらと今考えるとゾッとする
台所は割れた食器の山と化し、火災を照らして真っ赤に染めた街を写していた
避難を決めた我々家族は車で20分ほどの祖母の家に向かう。
祖母の家は木造家屋。幼い私でも嫌なイメージが浮かんだ
外に出るとバスタオル一枚で裸で走っている女性を見かけた。
1月の寒空の中である。おそらく会社に行く準備をしていたのではなかろうか
車窓から見えた景色はいつもの平穏な風景ではなく、山上から南下するに従って赤く染まった町並みだった
突然目の前に真っ暗な壁が現れ、その黒が何を示しているのかしばらく理解が出来なかった。
そうそれが高速道路の腹だったのだ。
いつも通っている道が通れず信号も機能していない中を祖母の安否を固唾を呑んで祈った
祖母の家にどうにか到着した時、目を疑ったが遠目には家が真っ二つに折れているように見えた。
だが幸い祖母はネグリジェで外に避難し立っていた
その時の安堵は忘れられない
その後、祖母の家の中を見にいったがタンスが両サイドから家を支え、抜けた床からは土と葉っぱが見えていた
その歪曲はさながら遊園地の忍者屋敷のようだった
それからは車での暮らしを余儀なくされた
父は被災の最中もドライバーで配送を続けていたがどのようにその焼け跡を納品して回ったのかは教えてくれない。思い返すのも嫌なのだろう。
長距離に出ていたドライバーさんが帰庫して泣いていたのを覚えている。
いつも強かった見た目も屈強なドライバーさんが泣いている事実を目の当たりにし、私の方が呆然としたのを覚えている。あんなに悲しい風景は見たことが無かった。
そこからは車の中で母が持ってくるお弁当(懇意にしていたお弁当屋さんが譲ってくれたのだ)を食べて過ごした。
暇になった妹と外に出て割れたアスファルトで反復横跳びをして叱られたのを覚えている。
そこから尼崎の叔母の家に私と妹2人(下の妹は直前に生まれた)そして母と避難をした
普段なら片道20分で行けるような道を1日かけて車で移動した
後にも先にもあんな渋滞は経験したことがない
(母は当時を思い出すと歩いた方が早かったとこぼす)
避難をしながらも当日だけ出席した幼稚園の卒園式には友人が何人かいない代わりに写真が飾られていた
当時の大人達は余裕がなくて本当に言葉少なだったが今となってはその大変さも想像を絶する。
そんな時でも弊社は営業をやめなかったのだが走れる道がないのにどうやって配送をしていたのかは未だに謎である。
当時のことを聞くとオトナ達は決まって「そんなん忘れたわ」と話す。
それ以上聞くことはタブーになっている気がして当時のドライバーさんにどんなストレスがあったのかは知る由もない
だが今となってはそのプロ根性に痺れるばかりである。彼らの仕事が復興に一役買ったことは疑いようもない。
私も大人になり、毎年忘れないようにとこのドキュメンタリーを見ることにしている
こんなに意味のある。また匂い・情景を刻んだ歌もそうないだろう
被災は報道が湧いている短い期間で終わるわけではない
覚えている限り数年は風景も殺伐としたものだったし、近所の公園にも仮設住宅が立ち、遊び場も少なかった
あの時の一種独特の空気や街の匂いは未だに私の脳裏に焼き付いているし、総じて地震による災害の悲惨を度々思い出すに至る
最後に
復興した神戸の街を見て人間の凄さ・災害時にこそ求められる物流の真髄を感じる毎日である
当時の大人達に感謝し、亡くなった方の分まで毎日を一生懸命に生きたい
生あることが当たり前だという感覚を捨てたい
このような未曾有の大災害がもう日本に訪れないことを祈って
Remember 1995/1/17 5:46
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画像引用:http://kobe117shinsai.jp/