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東京地裁第3回期日のご報告②
1月16日の期日は、国側の主張に対する反論に加えて、弁護団が訴訟前から準備していた調査結果をまとめて提出する区切りの期日となりました。
結果として、第3準備書面から第9準備書面まで、合計7つの書面を提出しました。
書面の内容についてはCALL4のケースページ または 別姓訴訟を支える会ウェブサイト に掲載されていますが、全部読むのは大変だと思いますので簡単にそれぞれの主張のポイントをご紹介します。
第3準備書面(国の主張に対する反論)
第3準備書面は、国側の主張に対する反論書面です。
国側は夫婦同氏制度の目的について「氏による共同生活の実態の表現という習俗の継続や家族の一体感の醸成ないし確保」と主張していました。
しかし、この習俗というのは家制度という明治民法における女性差別的な制度のもとでできたものであり、法律によって強制することによって継続させなければならないものとはいえません。
また、家族の一体感の醸成ないし確保も、氏を同じにすることで家族の一体感の醸成ないし確保をしたいと思う夫婦がそれをできるようにすれば十分であり、それ以外の夫婦にも強制しなければならない理由はありません。
国側の主張は、夫婦同氏を強制することの合理性を基礎付けるものではないと第3準備書面で主張しています。
第4準備書面(憲法14条1項違反)
第4準備書面では、新たに夫婦同氏制度は憲法14条1項の法の下の平等に反するという主張を展開しています。
性差別的な意識や慣習は、自覚的な選択によってひとつひとつ克服していかなければ解消されることはありません。
しかし、大阪大学大学院の三浦麻子教授の調査によると、約4分の3が夫婦の氏の選択についてそもそも「話し合わなかった」という回答でした。
このことからも、現在も約95%が夫の氏を選択しているという社会の不均衡は、性差別的な意識や慣習の影響が色濃く残っていることが分かります。
このような性差別的な意識や慣習を助長・固定化する夫婦同氏制度は憲法14条1項に違反すると、第4準備書面で主張しています。
第5準備書面(地位確認・違法確認に関する反論)
第5準備書面は、今回の東京訴訟で請求している地位確認・違法確認に関する法技術的な議論をしていますが、国側が原告らの主張は新しい制度の創設を求めるものであるから司法判断には適さないと主張しているのに対して、原告らは単に氏を同じにしないと婚姻できないことの違憲性を主張しているだけで、新しい制度の創設を求めているわけではなく、国側が原告らの主張を捻じ曲げているだけであると反論しています。
第6準備書面(条約について)
第6準備書面は、条約に関する書面です。
今回の訴訟では憲法違反だけでなく、夫婦同氏制度は日本が批准している条約にも違反していると主張しています。
憲法98条2項は、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と定めています。
また、条約法条約26条も「効力を有するすべての条約は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない。」と定めています。
しかし、条約締結国には条約を遵守する法的義務があるという主張に対しても、国側は「争う」と認否していました。
第6準備書面はこうした国側の訴訟態度を批判するとともに、改めて条約の位置づけについて国側の認識を明らかにするように求めています。
第7準備書面(学説の議論状況)
第7準備書面は、学説の議論状況を詳細にまとめた書面です。
夫婦同氏制度について平成27年に最高裁で合憲の判断がされています(平成27年判決)。
しかし、平成27年判決の判断枠組みは当時から多くの学説に批判されていましたし、昨今の社会の変化もあり、今では夫婦同氏制度は違憲であるとする学説が多数説となっています。
各判断要素それぞれについて、学者から指摘されていることを網羅的にまとめ、もはや合憲といっているのは(国を除けば)裁判所だけですよ?と言って、過去の合憲判断を改めるための議論を提供しています。
第8準備書面(国会の議論状況)
第8準備書面は、国会での議論状況を詳細にまとめた書面です。
夫婦同氏制度の問題は明治民法が改正されたころから指摘されていましたが、国会でほとんどと言っていいほど具体的な議論がされてきませんでした。
最高裁は選択的夫婦別姓制度について国会で議論されるべきと指摘していましたが、国会での答弁の内容を見ていくと、最高裁の判断が近づけば「最高裁の判断を注視する」と言って議論をせず、最高裁が合憲判断を出すと「合憲の判断が出たから」と言って議論をしないということが繰り返されています。
最高裁が合憲の判断を示すことで、国会において議論をしないお墨付きを与えてしまっているという状況を指摘するとともに、反対派が強い影響力を持ち続けている背景には、保守派の政治家たちの票田である、宗教右派の存在があることも指摘した上で、「司法においては、解決を安易に国会に委ねることなく、夫婦同氏制度が人権を侵害するものであることに向き合い、その責務を果たされたい」と寺原弁護団長が締め括りました。
第9準備書面(国際的な動向)
第9準備書面は海外における動向をまとめた書面です。
夫婦同氏を強制している国は世界でも日本だけとされていますが、中には夫婦同氏制度だったのが条約への採択や勧告等を受けて法改正によって婚姻前の氏を保持することが認められるようになった国も多くあります。
第9準備書面は、弁護団で確認できた95か国の状況について整理し、婚姻後も氏を保持することが人格権やプライバシー(私生活の自由)の権利として国際的に確立していることを詳細にまとめた貴重な書面となっています。
書面提出に至るには、チーム内での構成検討→各種調査や学者との意見交換等→チーム内起案→弁護団によるレビュー→修正というサイクルを繰り返します。
今回も数か月にわたって内容を詰めていき、なんとか提出期限に間に合わせることができました。
弁護団の執念(!)の結晶ですので、ぜひ、CALL4または別姓訴訟を支える会のページでお読みいただければと思います。
弁護団長 寺原真希子
弁護団事務局長 三浦徹也
弁護士 橘高真佐美
東京原告コメント
原告 黒川とう子
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第3回期日も、傍聴等の応援をありがとうございます!
毎回励まされています。
個人的には、期日報告会にご近所さんが来てくださっていて、椅子からずり落ちるほど、たまげてしまいました。
この日は、弁護団の方々が必死に仕上げてくださった7種類の準備書面を、3人の弁護士の方が説明しました。
私たち原告はひたすら目ヂカラで応援。
30分ほどで期日自体は終わりましたが、弁護団の方々の血と汗と涙の結晶である準備書面は、ぜひ目を通してみてくださいね!
「学説の議論状況」では国の反論の余地を封じ、「国際的動向」では世界の中での日本のダメダメっぷりが際立ち、「国会での議論が期待できないこと」では、戦後に家制度の残滓として「夫婦同姓強制」が残り、1954年の法制審小委員会で検討項目として指摘されながら70年も改正しないグダグダっぷりが炙り出されています。
次回も応援をよろしくお願いします!
原告 小池幸夫
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今回、新たに7つの準備書面が原告側弁護団から提出されました。
その分量たるや膨大で、原告の一員としては大変申し訳ないことなのですが、しっかりと目を通すことはできていません。
多忙な日々をお過ごしの中、多くの時間を割いてこうした書類を作成していただいた弁護団の先生方に心から感謝申し上げます。
当日は裁判所から20分限定で要旨陳述が認められ、三浦先生、寺原先生、橘高先生が弁論に立たれました。
この弁論がすばらしかったです。
耳で聞いただけでもすっと頭に入ってくるのです。
おそらく法律の専門知識を持たないわれわれ原告や傍聴に訪れた支援者の方々のことを考え、理解しやすいように種々工夫を凝らして原稿を作成し、制限時間内に収まるよう何度も練習した上で当日の弁論に臨まれたのだと想像します。
本当にご苦労様でした。
さて、次回期日は5月15日(木)に決まりました。
今度は被告である国側が反論することになります。
第2回期日同様に事前に提出された準備書面の確認だけに終わるのか、はたまた時間をとって要旨を弁論するのか。
可能ならば法廷の場で国側の反論を聞きたいのですが、無理かなぁ・・・。
それでも5月15日は上京し、弁護団や支援者の皆様方から元気を分けていただきます。
原告 上田めぐみ
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弁護団超大作の7種類の準備書面、一応、目は通しましたが圧倒されました!!
素人目にも驚いたのが、1947年の衆議院司法委員会において、夫婦同氏制度について「可及的速やかに将来において更に改正する必要がある」との付帯決議が付されていた事実が書かれていたことです。
約80年は「可及的速やか」ではまったくないですよね。
いったい国は、国会議員は、何をやっていたの!?
国民はなぜ怒らないの??
と改めて憤りました。
昨年末あたりから「旧姓の通称使用の法制化でいい」というネガティブキャンペーンを繰り広げる一部メディアやSNSに辟易し、当事者が求める法改正が実現するよう、絶対に裁判で勝ち切らなければならないと気持ちを新たにしています。
本年の裁判も見どころ満載、勝負の年です。
さらに応援してください!
みなさんと連帯して、声を上げていきたいです!!
原告 新田久美
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急遽報告会に参加することにしてしまい、また、途中退席もしてしまい、ご迷惑をおかけしました。
原告、弁護団、支援者の皆さんとお会いできると元気が出ますし、微力ながらもお役に立てれば、という気持ちをあらたにできます。
今回は原告半分の参加、だったので、次回はもう少し人が増えるといいな、と思いました。
期日報告会アーカイブはこちら
札幌原告 西さん作、当日のショート動画も好評配信中!
東京地裁・第4回期日のご案内
日時:2025年5月15日(木)11時~
場所:東京地方裁判所 103号法廷(大法廷)
支える会の連載公開中
別姓訴訟を支える会では、「全国保険医団体連合会」という、主に医師向けの業界紙に連載を持っています。
原則、会員のみの限定公開なのですが、現在、連載部分を公開してくれていますので、ぜひご覧ください!!
クラウドファンディングにご協力を!
「夫婦別姓も選べる社会へ!訴訟」を支援するクラウドファンディングを実施中です。皆様のご協力により、ファーストゴールを達成しました!!誠にありがとうございます。寄せられたメッセージひとつひとつを見て、いつも感激しています。
とはいえ、これで終了ではありません。長い裁判、今後も活動を続けるためには資金が必要です。訴訟中はいつでも寄付いただけるようオープンにしています。セカンドゴールの設定を検討中ですので、引き続きご協力よろしくお願いいたします!
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