魔女のやさしさが宅配された話
今年の夏も、ジブリ作品がいくつも放送されましたね。それほど多くの人に親しまれている作品の中でも、私が1番好きなのは「魔女の宅急便」です。
色々なランキングを見るとそんなに順位が高い訳ではないけど、低すぎもしない。だからこそ魅力を知ってほしい!
…というのは建前で、私が愛を語りたいのです!今回はその一心で記事をお送りします。
皆さん、私は「魔女の宅急便」のどこを1番好きだと思いますか?
…すみません。多分、正解した方は居ません。
正解は、
「キキが一人暮らしをするところ」
です!
私がこの作品を初めて観たのは小学校中学年頃だと思います。
公開よりだいぶ後で、テレビ放送もされていました。その録画を観た私は、13歳の主人公が故郷を出て一人暮らしをすることに、どうしようもなくときめいていたのです。
当時、「子ども」は今と違って大人からあまり意見を尊重されていませんでした。少なくとも私はそう感じていました。
「子どもが何を言っているんだ!」
「子どもに何が出来る!」
テレビでも日常でも、毎日のように大人から言われ、大人への反骨精神を抱えていた私。
そんな時に、自分よりちょっとお姉さんだけど子どものキキが一人暮らしする姿が眩しく見えても、自然なことだと思います。
しかも彼女が一人暮らしする部屋は、パン屋の2階とも屋根裏ともつかないところ。
窓が小さいせいか昼でも暗く、長年使ってないだろう埃っぽい部屋に、キキのリボンと靴とラジオの赤色が鮮やかに浮かび上がります。
それが隠れ家のようにミステリアスで、早く大人になりたいけれどワクワクすることも好きな、私の心をくすぐったのです。
新しく住む街に到着した翌朝、キキは自分が持ってきたお金を数えていました。
紙幣も硬貨もバラバラで、
「きっと、待ち焦がれていた自立の日のために貯めていたのだろうな。」
と想像できます。
そのお金でこれからの食料や生活用品を買いに行き、生活は物入りでお金が必要なことを嘆く場面もありました。
子どもの楽しいところと大人のリアルが交互にやってくることで、私の一人暮らしへの憧れに拍車がかかります。
新生活への希望だけで突っ走っていた子どもらしいキキも、
「街の人達に白い目で見られる」
「お巡りさんに詰問される」
「初仕事で失敗しかける」
「空を飛べなくなる」
と、小さな挫折をたくさん味わいますが、その度に人の優しさに救われて、成長していきます。
魔力を失いかけて無価値感のあった自分に変わらず優しくにしてくれた人達を、助けたくなったのでしょう。
唯一の取り柄と言っていた飛ぶことにこだわらず、歩いて依頼人のもとへ行き、命の危険が迫った友達を助けようと走りました。
そんな彼女の姿に私も変わっていきます。
最初は一人暮らしへの憧れだけで観ていたのに、キキの成長しようとするところや葛藤、周りの人の温かさも心に響いてくるようになったのです。
そのせいか、終盤、あの部屋はトンボが看板を付けてくれただけでもっと素敵に見えました。
私はキキの数倍生きているからか、今では隠れ家での一人暮らしよりも、明るい家で家族と笑っていたいです。
大事な人達との暮らしは、隠れ家を求めなくても楽しく希望に溢れていると分かったのだと思います。
それでも「魔女の宅急便」を観ると感じる、子どもが宝箱を開けるようなワクワクは変わることはありません。