桐壺登場 その二十 疑惑の真相と賜姓源氏の瞬間を語る
その二十 疑惑の真相と賜姓源氏の瞬間を語る
ひかっち、お土産いっぱい貰って帰ってきました。思った通り、日韓、夢のアンプラグドが行われた模様です。非公式だなんてもったいない。
帝、早速、御礼の品をジャカジャカ届けさせます。だからバレるんです。
極秘じゃなかったの?
高麗の観相師に我々の秘密兵器、第二御子を観てもらうなんて世間的にまずいから隠密に事を運んだんじゃなかったの?
鴻臚館、勝手に使ったのもまずいんじゃないの?
「これってどういうことですか」
ほら、右大臣が出てまいりました。あのボンクラの、あ、いえ、それほど分かりやすいってことです。
つまり、「国家施設を私的に使ったことの説明をして下さい」ということです。「非公式に巨額の贈答品をやりとりする高麗の観相師とのつながりを説明して下さい」ということです。これらは一連の疑惑に対して決定的な状況証拠ですから、これらを突きつけた上で、「第二皇子一派の意図を説明して下さい」ということです。
ということ、なんだけど、右大臣の「これってどういうことですか」は単に、「右大臣である俺と俺が後見する可愛い孫(第一皇子)をないがしろにするな」ってだけのこと。
でも世の中はこれがどういうことか見抜いていて、さらに今までが今までだけに、「これはいよいよ、もしかして、もしかするぞ」の声があちらこちらで再燃します。
これに対して帝、放置。
だから世間では「光る君、帝位へ!」っていう見出しで、どこもかしこもそれでもちきり。
ちょ、ちょ、ちょっと、帝位って、そんな…。
すでに異母兄の一の御子が次期春宮に決まっているのに、帝位って、そんな…。
その前に帝の弟宮が現春宮でいらっしゃるのに、帝位って、そんな…。
そもそも光る君、親王でさえないのに、帝位って、そんな…。
…ですよね。
それがたかだか外国人占い師に会ったくらいで、帝位って、そんな…。
…ですよね。騒ぎ過ぎ…。
いえいえ、観相師というのはそれくらい影響力絶大なのです。しかも高麗です。革命によって生まれた新興国家。情熱半島からやってきた奇跡の観相師。オーラが違います。
それで次のような噂が飛び交います。
「ここだけの話なんでおじゃるが、麿の友達の友達が高麗人の友達なんでおじゃるが、その友達から友達が聞いた話なんでおじゃるがのう、その観相師は何と、光る君を見るなり大層驚いてのう、
ゴニョゴニョゴニョ…
と言ったそうでおじゃるよ」
えええっ〜?そうなの〜? 私、桐壺なんだけど、聞いてないよ〜!
べんじいの話では占いするの、忘れてたそうです。ずうっ〜とセッションしてたそうです。そんな日韓の超絶神ジャムにうちの光も堂々参加して相乗効果二乗三乗、憧れの鴻臚館でずっと盛り上がっていたんだそうです。…なに、この人たち、凄すぎる。
それで観相師は光のことを散々褒めて、最高!とか、天才!とか、世界狙える!とか、言ってたんだそうです。
それはもはや観相学でも何でもないんじゃ…。でも嬉しい。ひかっち、すごいよ!
だから彼、馬鹿みたいに御礼の品をあんなに贈って、で、バレて、この有り様。
ともかく観相師、占ってませんから!
にもかかわらず噂が立つ。夢のような事実よりも至極ごもっともな噂が立つ。信じられないような現実よりも杓子定規な噂が立つ。
その噂は不思議なことにというか、案の定というか、以前、帝が事あるごとに占わせた占いの数々と全く同じなのです。巷の観相師はもとより、占星術や数秘術、四柱推命や宿曜術、動物占いや果ては怪しげな心霊占いまで、それらの答えが全く同じなのです。その答えとは、つまり、想像の範疇を決して超えない生々しい処世術。
「それを見抜いた高麗の観相師はさすがだ」
と帝は格好良くおっしゃって、光る君は源氏姓を賜りました。
えええっ〜?なんで〜?
私のこれまでってなんだったの〜?
あなたの天皇親政はどうしちゃったの〜?
高麗の観相師がさすがってのも意味分かんないよ〜?
落ち着きましょう。ちょっとここで「いずれの御御時」について考えてみましょう。