見出し画像

タツコン2024 作品解説

『帰路』  F3号

作品をご覧になって、いつも発表している作品と随分違うな…と思われるかと思いますが、今の作風にこだわらず、テーマと自分に素直に向き合った結果、今回の夜空の風景画となりました。

場所は、私が子供の頃からずっと暮らしてきた、犬山市のとある場所になります。
広い空の下、田畑にいくつもの電線と鉄塔が立ち並ぶ風景が綺麗で、人の営みを感じられて好きな場所です。

私は子供の頃から、冬の夜空を見るのが好きです。何故好きかというと、冷たく澄んだ空気感と、いつ見てもオリオン座がすぐに分かるのがなんだか楽しくて。
小学生の頃は習い事の帰り道、中学高校は部活の帰り道。社会人になって、今も仕事を終えて空を見上げると、子供の頃からずっと変わらない空が見えるのが、ああ、この空の下で自分は生きてきたんだなぁと感じます。

作家活動を始めて、色々な地域の方と関わる機会が増えて、ああ、やっぱり自分はここが好きで、ここで育ったことに誇りをもちたいなと最近思うようになってきました。

またこの制作中、祖父が余命宣告を受け、先月、他界しました。祖父もまた、生まれ育った犬山が好きで、犬山で最期を迎えることが出来たことが、私個人としては本当に良かったなと思っています。"亡くなった人は星になって見守っているよ"というのはよくあるセリフですが、そんな気持ちも込めて、夜空の星を描きました。

次に、画材や技法について説明したいと思います。
今回、岩絵具の下には焼いた銀箔があります。"焼く"とは、銀箔の上に硫黄を染み込ませた布を当てて、アイロンで熱を加えて硫化させて変色させる技法です。熱の温度によって色が茶色や黒、青緑などと変わるので、調整が中々難しいです。その上に、粗い岩絵具を何層も乗せていきました。

山や鉄塔などは描き込み過ぎないよう必要最低限に。今回、ちょっとした差し色に色鉛筆を使用しています。色鉛筆は日本画の質感と相性が良く、学生の頃はよく使用していました。

今回はいつもより一層、画材の特性や偶然の動きを活かした画面作りを心がけて制作しました。

長文お読み頂きありがとうございます。
2024年12月21日(土)まで、GALLERY龍屋にて展示しておりますので、ぜひご高覧頂けますと幸いです。

いいなと思ったら応援しよう!