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Contending Ideas on China’s Non-Alliance Strategy

【英語原文】

Ruonan Liu and Feng Liu, “Contending Ideas on China’s Non-Alliance Strategy,” The Chinese Journal of International Politics, Vol.10, No.2, 2017, pp.161-163.

【日本語訳文】

以上のような論点を概観したら、中国の同盟戦略について、なぜ様々な分岐が生じるのか不思議に思われるかもしれない。異なる処方箋は通常、学問の基礎となる様々な理論的観点に由来する。しかし、中国学界におけるIR学者や外交政策アナリストの多くは、相対的明確なIR理論を好むけど、明確な理論的立場を持っていない。したがって、中国が非同盟原則を放棄する必要があるかどうかに関する学者の立場は、IR文献に見られる伝統的な理論的枠組みに当てはまらない可能性がある。表1が示すように、上記の節で検討した3つの大まかな政策選好には、少なくとも6つの理論的立場が反映されている。

一つ目のグループは本質的に非理論的で、オーソドックスな陣営に位置する。これらの学者たちは、IR理論的概念や学派に頼ることなく、ただ政府の立場を守ろうとする。驚くなかれ、この陣営に属する学者の多くは、政府傘下の研究機関の出身であり、または政府機関と密接なつながりがある。オーソドックスな学者が政策問題について独自の見解を示すことは珍しい。

二つ目のグループは、防御的現実主義に分類され、一般的に非同盟または同盟に代わる他の選択肢を好む。彼らにとっては、適切な措置によって米中間の安全保障ジレンマを緩和することは可能である。この点で、唐世平は防御的現実主義の洗練された説明を展開し、中国にとって穏やかな安全保障環境を形成する上での再保証戦略の価値を強調した。同様に、朱鋒は、現在の一極体制は、対米対抗連合を発展させることを大きく制約していると主張する。このような構造的な制約から、中国はハード・バランシングよりもソフト・バランシングを追求する方が賢明なのである。

この議論における三つ目の理論的傾向は、攻撃的現実主義の観点に類似しており、一部の軍事学者が主要な研究者となる。これらの学者は通常、中国の不利な外部環境と米国の封じ込めによって引き起こされる中国の深刻な安全保障上の脅威を強調する。例えば、中国国防大学教授で影響力ある軍事戦略家である戴旭大佐は、広く引用された著書の中で、中国は「C型包囲網」(米国と東アジアの同盟国が構築した境界線の弧)に陥っていると警告した。この包囲網を突破するために、彼は中国に対し、中ロ同盟の構築を含む強硬な防衛戦略を追求するよう促す。

四つ目の理論的アプローチである道徳的現実主義は、中国の文脈から生まれたもので、閻学通が主要な提唱者である。この観点から見れば、大国間の競争は力だけでなく、IRにおける政治的リーダーシップの決定的な要素である道徳にも関わる。中国が信頼できる友好国を引き付け、他の支配的な大国、特にアメリカに対する政治的リーダーシップを向上させることができるのは、他国への安全保障上のコミットメントを拡大することによってのみ可能なのである。だからこそ閻氏は、中国が伝統的な非同盟政策を放棄し、軍事同盟のネットワークを構築し始めることを強く求める。

リベラル派は五つ目のグループを構成し、米中協力に損害を与えるとして、同盟を結ぶという考えに反対する。リベラル志向の強い著名な中国学者である王輯思は、「アメリカとの安定した協力関係は、現代化への道を歩む中国にとって最善の利益である」と考える。彼はまた、「アメリカが中国の主敵であるという見方に基づく大戦略は......中国の最大の貿易相手国であり、世界最強の経済・軍事大国であるアメリカと敵対すれば、中国の経済発展を深刻に抑制することになる」と警告した。リベラリストは、高い相互依存と社会的相互作用が米中間の協力関係に及ぼす影響を重視する。

最後に、コンストラクティビズム的アプローチは、非同盟を好む。中国の著名なコンストラクティビストである秦亜青は、中国の非同盟戦略を理想主義の観点から説明した。中国文化にコンストラクティビズムを取り入れた秦氏は、主に中庸弁証法に基づく関係理論を展開する。中庸弁証法とは、中国の伝統的な思考法であり、有機的な全体における不可欠な部分として、対極にある2つの極端なものの共存を仮定するものである。秦はこの学派の考え方に基づき、非同盟政策を放棄するという閻氏の考えを批判し、閻氏の強い二極対立的バイアスを論証して、「非同盟は中国の外交政策の主要な特徴であり続けるだろう。潜在的な同盟国がどの国であろうとも、パワーを増大させるための積極的な戦略的同盟は、中国がとる可能性の低いように思われる」と結論づける。

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