~絆《むすぶ》~ 2         イラスト 穂積 小夜さん 小説 藤枝 那緒

「……なに?」
 私は素っ気ない態度で、音の方を向く。
「あの時は、ほんとごめんっ!」
 あれほど自由奔放な音が、こんな真剣に謝るなんて。でも、音が厄介ごとに首を突っ込むのが多いのを反省するまで、私は他人行儀な接し方を続けようと思う。
「赤羽、糸井。授業資料持ってくるの遅くなった」
 職員室から先生が授業資料を持って出てきた。先生から渡された授業資料を、それぞれ抱え持つ。
「‘’糸井さん‘’、教室戻るよ」
 先生の後ろで、また気まずい雰囲気が流れる。

 その後の授業で、私と音が運んだ授業資料が使われることになった。先生から手渡されて後ろに配ろうとしたけど、音から顔を背けたくなる。
 正直、私も音に言い過ぎたところはあるけど、心配させるようなことを起こす音も悪い。
 あれから数日経ったのに、まだお互いに『ごめん』と言えないでいることがもどかしい。ほんとなら放課後にでも謝りたいけど、そんな勇気が出ない。
 授業が終わる直前に、音がトントンと私の肩をたたく。
「放課後、時間ある?」
 私はぎこちなく頷いた。


 お昼は別々で済ませたこともあり、ある程度は気持ちがまとまった。
 ーー正直、私も音に言い過ぎたところはあるし、音はちゃんと謝ってた。この数日は他人行儀に接してきたけど、これ以上音の苦しそうな表情を見るのは心が痛い。……私も、しっかり謝らないと。
 やっと気持ちの整理がついた時、私の中で複雑に絡まっていた友情の糸は少し緩んだような気がした。
「……おと、あのね」
 放課後の教室で、鞄の中を整理していた私は話を切り出した。
 

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