それでも足掻くマイメモリー ノベル作品集     シナリオ&コンテンツ企画専攻3年藤枝 那緒

 高校二年のホームルームの後、私は担任の先生と進路の話し合いを終えて学校を出た。

 私は、何を目指していたんだろう? それを考えること数週間、未だに頭にかかったモヤがとれない。周りは既に動き出しているのに、取り残された気分。

でも、決めなきゃいけない時は来る。今がその時なのは、分かってる。同級生の裕子に聞いてみたけど、

「私? 安定してるし公務員かな」

 と、既に決めていた。

「亜美は決まったの? 進路」

「あー、何とも言えない……」

 聞かれても、曖昧な答えしかできない。

 来年で卒業なのに……。

 大学や専門学校に行く人もいれば、卒業した後に働く人だっている。……私はどうだろう。

 十二月の寒い空の下、白い息を吐いた。



「……ただいま」

「おかえり。亜美、元気ないわね」

「……うん。進路志望がなかなか決まらなくて。母さん、少しだけ一人にさせて」

 力なく言葉を吐いて、自室に籠る。

 進路志望のプリントを乱雑に机へ放り出した。

「はあぁぁ……どうしたらいいかな」

 ため息をついてシャーペンを握る。空白の希望欄を前に、私は頭を抱える。



 そうして悩むこと二時間。一向に決まらない。ますます頭が回らなくなってきた時に、三度のノックの後で部屋に入ってきたのは、兄の湊だった。

「亜美、進路が決まらないのか?」

 妹の様子を心配して見に来たんだろうな、なんて思っていたら、

「俺も、亜美のように高校生だった時は、進路揺らいでた」

 と高校時代を懐古していた。無造作な髪を掻きながら。

「え……湊も、悩んでたんだね」

「自分のやりたいこと、感じたことを描くのは難しいかもしれんけど、やり続ければ目標に近づくもんだ」

「自分のやりたいこと……」

 それが分からないから、こうやって悩んでいるんでしょ。

「亜美、俺は亜美の書いた小説好きなんだけどね」

「え、なんでそれ知ってるの⁉」

「小説を投稿するサービス、あるだろ? 俺、フォローしてるんだよ」

 噓、恥ずかしい……‼ 顔が火照っていく。

「ご飯、もうできてるって。部屋に運ぶ?」

「……ううん、運ばなくて大丈夫」

 私は湊と一緒にリビングへ向かった。



 夕食をとった後、私はまた部屋に戻る。また湊がついてきた。

「亜美は、やりたいこと何か決まってる?」

「あのね……それが決まってないから、こうやって悩んでるでしょ?」

「おお、怖い怖い」

 私がぶっきらぼうに返すと、兄は茶化してきた。

「茶化してごめんな。俺は、亜美のやりたいことを応援するよ」

 茶化した後に、それを言うのはずるい。……でも、自分のやりたいことは、兄が言ってたように、文章で自分を表現したい。やっと腹が決まった時、兄が私の右肩に手を置いた。

「ほれ、肩凝ってるだろ? 俺、亜美のやりたいこと応援するから。大丈夫、今まで積み重ねてきたものは武器になる」

 湊の応援に、力が湧いた。やっと自分のやりたいことが決まったんだ。

「湊、ありがとう!」

 シャーペンを握る気力がこみ上げてくる。進路志望のプリントに書いている時の自分の表情は、どんな感じだったんだろ。書き終わって湊の方を振り返った時は、心の底からやる気にあふれていた

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