~絆《むすぶ》~1                       イラスト 穂積 小夜さん 小説 出町基

主人公 赤羽 結衣(あかばね ゆい)
友達 糸井 音(いとい おと)
「ゆい~」
私を呼ぶ大親友、音の声。そっちに振り向くと猛スピードで音が私のもとに駆け寄ってくる。
「わっ……そんな急がなくても私は逃げないってば」
あわや正面衝突するんじゃないかと思った音は、何とか私の目の前で止まった。
「えへへ~ゆいと帰りたかったんだもん」
そう言いながら私の腕を取って帰路を辿る。
「またゆいと一緒に帰れるなんて思ってなかったよ~」
その音の言葉に、私はあの時のことを思い出し少し苦しくなる。
 あれは雪が降っていきなり寒くなった日のことだった。
「おとのばか! もう知らない!」
私の大きな声が音の耳をつんざき音から離れていく私、大喧嘩のきっかけは些細なことだった。普段から自由奔放で色々と厄介ごとに首を突っ込むことの多かった音、それに巻き込まれる私。けれど音と笑って過ごしているだけで楽しかった。でも、首を突っ込むたびにケガをする音をみるのがつらくなっていったのもどこかに感じていたがそれを表に出せば音との繋がりが消えてしまうような気がして言えなかった。そんな時、厄介ごとに首を突っ込んだ音がケガをして病院に運ばれた。道路にいた猫を車から助けようとしたらしい。ひかれはしなかったものの車体に少しぶつかって打撲やガードレールにぶつかって頭を少し切ったようだった。音を失うのが怖くなった私は、震える声で音に怒ってしまった。
 それからというもの、
「ゆ、ゆいご、ごめ」
「何か言った? ”糸井さん”」
「っ……」
音に対して素っ気なく他人行儀な接し方をした。反省させるお仕置きのつもりだった。
「な、なんでもないよ”赤羽さん”ごめんね話しかけて」
苦しそうな音の顔を見るのは辛いし心も痛かったけれど、音が私の知らない所で勝手に心配になるようなことを起こすのが悪いのだ。それでも運命は残酷なようで五十音順で組まれている席は私の後ろが音なのだ。授業中も休み時間もすべてが気まずかった。そんな日から数日たったとき、
「赤羽、糸井、職員室から授業資料を運ぶのを手伝ってくれないか?」
先生がよりにもよって私と音を指名した。
「「はい」」
音と私の声がハモった。いつもならふふふと笑えるのだが、喧嘩をしているこの状況では、全く笑えるものではなかった。
「今から取りに行くからついてくるように」
そう言って先生と私と音は教室を出ていった。先生は用事を思い出し、先に行ってしまって二人っきりになった私たちは職員室までの道のりを無言で歩き、気まずい雰囲気が流れ続ける。そんな静寂の中、最初に口を開いたのは、音だった。
「あのさ、ゆい……」

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