ROCK IN JAPAN FESTIVALとモーニング娘。に見るアイドル文化に対する変容
これはそもそも、ハロプロというものがアイドルなのかどうかという話に始まる。複数人の女の子グループで、テレビの企画から生まれて、という直近ではおニャン子クラブ的な成り立ちが故にアイドルとしてメディア含めて扱ってきただけの話で、彼女達が受けたのはロックボーカリストオーディションだったのを忘れてはいないだろうか。
いや、確かにもうメンバーは15期にもなったし、ロックボーカリストになろうとして入ってくる子はいないのだが、しかし、ハロプロの子のスキルの高さというのは、貴方達はボーカリストですよ、パフォーマーですよということを叩き込まれているからだ。我々や、メディアが言うところのアイドルを作ろうとしているわけではない。
ここのもやもやとした感情というのは、過去の話を紐解く必要がある。モーニング娘。は初期からおよそ4年程を黄金期と呼ぶ。セールスはうなぎ上り、LOVEマシーンなど空前のヒットを何本も叩き出し、ユニットのCDも驚く程売れた。だが、音楽そのものが消費され、飽きられ、アイドルというものが稚拙なものと結びつけられていった。
その後、高橋愛を中心とするプラチナ期が訪れる。音楽性が高く、これまでのアイドル的な楽曲を離れ、シャープなアプローチへと変わっていくが、モーニング娘。という名前に対するレッテルから、どんどんと数字が下がり、テレビへの露出が無くなりツアーを回るだけの時期となる。
だが、この当時の表現力の高さ、ボーカリストとしての才能というのは、別な人間に置き換える事が出来ないようなパフォーマンスを行っており、その後のモーニング娘。におけるスタンスを確立したと言っても過言ではない。それだけにファンの間では、何故こんなにかっこいい事が出来ているのにきちんとプロモーションをしないのか、という声があった。
同時に、アイドルを応援するということに対しての白い目、モーニング娘。に至ってはよく分からないけど未だに続いてる落ち目のグループのような扱いもあった。リリースされた2007年は倖田來未、中島美嘉、大塚愛のような女性シンガーソングライターが埋め尽くし、EXILEがヒットの予兆を見せ始めたタイミングである。
エンターテイメントの世界で言われることだが、ファンというのは4年周期で入れ替わると言われている。アイドルに置き換えた時に、今まで長く続ける仕組みを持っていなかったため、この理論が作用するのかが分からなかった。モーニング娘。で言うならば、98年デビューとして、02年は後藤真希卒業、06年は前年に飯田、矢口、石川、この年に紺野、小川と立て続けに卒業している。10年は亀井、ジュンジュン、リンリン卒業だが、翌年の11年から潮目が変わり始める。まさに今のモーニング娘。を形作る10期のデビューだ。
この2010年以降のモーニング娘。はフォーメーションダンスにより注目を浴びて、今のモーニング娘。ってアイドルっぽくないとか、かっこいいという再評価へと繋がっていく。その立役者は当時センターを勤めた、今やBABYMETALのアベンジャーとして注目を浴びる鞘師である。ここから4年の間に初めての5作連続オリコン1位を達成するなど、新たな波を打ち始める。さらに、4年経った2018年、初めてのロッキンジャパンフェスティバルのステージに立つという流れだ。
4年周期で区切った時に、モーニング娘。自体にも大きな転換期、スタイルの変化というのが起きていることが分かる。正直な話、じゃぁ、今のモーニング娘。が手放しにかっこいいと言えるかというと、案外曲で大外ししてくることもあるので一概には言えないのだが、彼女達のボーカリスト、パフォーマーとしての技量、熱量は変わらず高いレベルにあり、それを評価する場を与えてもらっているのではないだろうか。
同時に、この20年という時は、音楽業界におけるアイドル音楽の立ち位置を変容させたように思う。80年代、一度アイドル音楽というそのもの自体が消えかけたこともあったところから、00年代アイドル戦国時代へ突入するまでに至った。
アイドル音楽そのものがこの国内における音楽ジャンルの1つとなった。昔のように誰もが知っているヒットソングを作るのは限りなく困難な時代にはなったものの、AKB48や欅坂46などで世代間を飛び越えるヒットというのが生まれるのはポップスとしての強みと言える。
また同時に、アイドルを好きになるという事へのマイノリティ感が軽減されているようにも感じる。これは同じような遍歴を辿るアニメファンにも同じ事が言えるかも知れない。
限りなくこの臨界点のようなものが近付いていった結果の、凛として時雨ピエール中野と大森靖子が行うビバラポップであったり、ハードパフォーマーであるモーニング娘。がロッキンジャパンに出るという現象へと繋がっていったのだと思う。
だが、これはアイドルの勝利ではない。モーニング娘。の勝利であり、その耕した土で育つハロプロの勝利でしかない。研修生の段階で非常に高いトレーニングがあって発揮出来る能力であり、同じ強度のものを他のアイドルが出来るかと言われたら、かなり困難である。
対抗するとしたら、同じようにハイレベルなトレーニングを積んでいるか、楽曲の認知度、話題性、様々な指標で考える必要があるが、果たしてこれからのアイドル業界にそんなグループが現れるのだろうか。
アイドル戦国時代は終わり、新時代へと突入する。モーニング娘。が開いた、この新たな扉はもしかすると他のアイドルとの新たな分断の始まりと見ることも出来る。この流れが何を引き起こすのか、誰もまだ知らない。