ジャーニーオブジェリコ〜ライオン道とあの日の日本
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クリス・ジェリコは雄弁な男だ。
それは、WWEという歴史において番組中にオリジナルのトークコーナーを持った数でもわかることだが、彼のレスラーとしての評価を紐解くと、最初に来るのはマイクの上手さであることは間違いない。世界初の統一王者、Y2J………彼は時代時代でキーワードとなる言葉を吐き、その時折で観客の視線を釘付けにしてきた。
その男がリングの上で雄弁となるのは、実は日本だ。この場合の雄弁というのは、マイクではない。試合の話である。
知られているだろうが、先に上げた新日のインタビューの中でも触れられているが、彼はまだデビューして間もない頃にWARに参戦、外道や邪道に揉まれながら、冬木軍の一員ライオン道として活動し、新日本のリングも通り過ぎていった。未だに日本に来れば、好物のふりかけを買って帰る程の日本好きであり、日本のレスリングメディアも漢字以外はなんとなく読める。なにより日本のレスリングスタイルを好んでいる。
最近、彼を知ったファンの中には、逆エビ固めがフィニッシュってどういうことだ?と思う人間も多いが、あの技はかつて新日の道場生からレスラーになったクリス・ベノワがヤングライオン時代に食らいまくった逆エビ固めを、ジェリコがベノワから教わりアレンジしたものだ。
WWEの日本公演というのは基本的にハウスショーの類いであり、試合内容などはTVテーピングよりは決められてないと言われているが、中邑と対戦した時には中邑が(ジェリコ欲しがるなー!)と思うくらい、日本人のファン向けの試合展開を繰り広げてみせた。
極めつけは、このインタビューのサムソンクラッチ。師匠とも言うべき冬木弘道の丸め込みを無意識に出したとうそぶくが、これもまたジェリコをよく知るオールドファンへのプレゼントであり、最近新日を見始めたヤングボーイ、ヤングガールへの謎掛けなのかもしれない。
前回の記事で内藤が放った勝ち負けでプロレスしているわけではない、というのは、こういう些細なことに繋がる。その一戦に勝った負けたではない、そのレスラーの感情や重ねた歴史に思いを馳せる時、プロレスというものの奥深さに触れることが出来るのも面白さの一つなのである。
それでいえば、かつてWWEのレスラーとして日本に来た時には邪道外道と飯を食っていたジェリコなわけだが、当の邪道外道は彼のサムソンクラッチを見て、何を思ったのだろう?いやいや、新日のリングでブリブラダンスが見れるとは思わないのだが………