"【速報】バーチャルYouTuberが9000人突破"から考えてみる
どんどんと増えるバーチャルYoutuber。世間一般の認識としてYoutuberですら何をしている人達なのかあまり深くは理解されていないこの状況で、さらにバーチャルなYoutuberが増え続けているらしい。この記事の中で気になったのはこの順位だ。
●ファン数トップ10 (VTuber 9,000人中)
1位 キズナアイ 267万人 (※ゲームchは114万人)
2位 輝夜月(かぐやるな) 99万人
3位 ミライアカリ 74万人
4位 電脳少女シロ 69万人
5位 猫宮ひなた 53万人
6位 田中ヒメ・鈴木ヒナ 47万人
7位 ヨメミ 40万人
8位 月ノ美兎(つきのみと) 38万人
9位 ゲーム部プロジェクト 34万人
10位 道明寺ここあ 30万人
Youtubeでのチャンネル登録者数なのだが、やはりキズナアイがダントツに多い。その次に日清のCMで鮮烈なインパクトを与えた輝夜月がそれを追いかける。
正直なところ、この10位に入ってくるような人達というのは、ある程度、今後メディアと関わるような仕事をしたとしても結果を残すような企画力やトーク力という武器を持っているので納得の顔ぶれである。
じゃぁ、残りの人達は?
【Youtubeの今後】
少しバーチャルYoutuberだけではなく、広く見たYoutube全体の話をしよう。7月時点で全世界のユーザー数が16億人、Facebookが24億人でインターネット全体で言えば40億人が利用している。
日本国内で言えば、インターネット利用者は1億人を越えていて、Youtubeの利用者は6200万人、Yahoo!やGoogleの国内利用者は6600万人と言われているので、ほぼ同じくらいだ。そう考えると、LINEが8200万人に使われているという数字はなかなか驚異的に見える。
今後のYoutubeで見ると、成長の要因はまだまだあって、自動翻訳の進化により母国語のコンテンツじゃなくても楽しめるようになる(もう少し正確に言うと、喋っている声を解析して本人が別言語を喋っているような技術が既にお披露目されている)し、利用時間自体はまだまだ増やす余地がある。
加えて、今後5Gの提供が進んで行けば、大容量通信が一般化してギガが減るのを気にする事無く、高画質で長い動画というのも提供出来るようになる。1つの動画が10分程度なのは、配信者としては視聴者の月末の負担を考えての部分もあるのだそう。
そして、コンテンツの面で今後、一般人ではなくいわゆるテレビの側が資金力と技術を持ってYoutubeなどの動画コンテンツに関わってくる可能性があると言われている。
この状況で、今後のYoutuberに求められるであろうのは”専門性”である。
【専門性の強いYoutuberが強い理由】
Youtubeに限らず、今、様々な情報はそれまでの行動履歴や興味をAIが分析してお勧めをサジェストするような構造となっている。Youtubeで言えば、最初にページを開いた後、動画を見始める時の行動は3つだ。
・ホームに表示されたオススメを見る
・気になる言葉で検索して見る
・急上昇ランキングを見る
ホームのオススメは登録しているチャンネル情報などを含めて、オススメされた情報が並ぶ。反対に急上昇ランキングは全体的に今、話題になっている動画というのを見る事が出来る。当然、急上昇ランキングはそもそものチャンネル登録者数が多い、またはSNSのバズによって流入が多いなどの条件が見えてくる。
オススメというのは言ってみれば自分の行動によって変わっていくので、重要なのは2つ目の検索した時に表示されるコンテンツというわけだ。
検索をした時、デフォルトで関連度順で表示されるようになっている。この関連度順で上位に表示されるのは再生回数ではなく総再生時間と言われており、再生したとしてもこれが有用な情報ではないと思ったら離脱する人が多ければ、関連度は低いと見なされるという仕組みのようだ。
つまり、検索された際に視聴者が関連度が高いと判断し、きちんと視聴してくれる情報を持っている配信者は選ばれやすいということになる。
軽快なしゃべりと包丁さばきに定評のあるきまぐれクックさんのチャンネルだが、バイトで魚を捌く事はあったものの板前の修業とかをしていたわけではなく動画で覚えたというが、近海の魚を問わず、貝なども鮮やかに捌く。
とにかく魚への興味というのがまずあって、そこを突き詰めながら、動画としてのエンターテイメント性が結びついていると言える。
美容や大食い、ラーメン食べ歩きなど自分が参考にしたい情報を持っていたり、したいけど出来ないことをしてる専門性の高いYoutuberというのは今後も強いのである。
ラーメンはやはり強い。
【バーチャルYoutuberの専門性をどこで生み出すのか】
これをバーチャルYoutuberに置き換えた時にはどうだろう。トークでもなく、ゲーム実況でもなく、アキネイターでもなく、その子でなくては出来ないことをしている子というのはどれだけいるだろうか。
バーチャルYoutuberというのは性質上、作られた3D空間から出ることは難しいから食レポや料理というのは難し………いや、いた。
おめがシスターズがかっぱ寿司で行われたYoutuber限定取材無料をやった時に次元を飛び越えて、かっぱ寿司に突入し、お寿司を食べたのである。
この二人、面白いのが3D空間である事を利用して、物理演算を活かした企画をしたり、いち早くYoutubeの新機能を紹介する動画を上げていたら公式にコントリビューター任命されるなど非常に専門性が高い。
※Youtubeコントリビューターに任命されると、限定のワークショップに参加したり、Youtube側のチームと直接交流したり、事前に新機能の情報を受け取れるなど特典がある。
花譜は15歳で、アルバムのリリースを控えている。普段上げられている動画では動いているところを見せないが、ライブではバーチャルYoutuberとして3Dのアバターで現れるという少し特殊なスタイルだ。
圧倒的な歌唱力と、声の魅力、姿はあるのにそれはどこか希薄な様が彼女が3Dであることによってより際立つ。歌を歌うバーチャルYoutuberは少なくないし、イベントとしても歌合戦など開催されているが、アーティストイメージとしてその意義が結びついているのは珍しい。
3D空間を利用したクリエイター系バーチャルYoutuberも現れており、バーチャルYoutuberだからこそ出来る専門的な表現というのが今後出てくれば、その市場を牛耳ることとなるに違いない。
【バーチャルYoutuberだからこそ出来る表現】
にじさんじ所属の月ノ美兎が仕掛けた一連の出来事は、バーチャルの世界と見ている人間の世界の間を溶かしながら、バーチャルYoutuberにおける魂と肉体の在り方をうまく描いた事例となった。(放送を見ている側としては狂気の沙汰だったが)
いわゆるオカルトや都市伝説ものというのは、Youtubeのコンテンツとしても強いコンテンツであり、それをただ喋るだけなら生身でも構わないわけで、見せ方や入り方も含めて斬新だった。またバーチャルYoutuberにとって中の人と肉体という問題は、今年の夏に様々な形で紛糾した話題でもあり、そこへのアンチテーゼとしても際立っていた。
演技であったり、空間の演出という部分でクオリティを上げる要素はまだまだあることから、この部分の挑戦というのは面白いかもしれない。
【現実とどう融合していくか】
バーチャルYoutuberには全く真逆の要素も今後求められていくと思う。テレビ業界などが入ってくることによって、バーチャルYoutuberの可愛らしい見た目を利用したいという声は増えていくだろう。
現実に、装置を利用して、リアルなイベントに参加して登壇者と会話したり、テレビ番組でモニターに映ったり、グリーンバックを利用して同じ空間に入ったり、様々な方法が模索されている。
今、Youtuberがテレビに出るとなった時に、コンプライアンスの面や社会常識の面で問題がないかということはおそらく非常にネックになっていると思う。その点、HIKAKINが呼ばれるのはそういう面での実績の賜物と普段の動画での安全性と言える。ANNでラジオをやった水溜まりボンドもYoutube界のNHKと呼ばれる程に配慮された動画となっている。
バーチャルYoutuberを見た時に、さっきの月ノ美兎であれば好きな映画がムカデ人間とか、ゲーム実況で相手の頭を撃ち抜いて奇声を上げる白イルカとかアナーキーな人材ばかりが目立つ傾向がある。
バーチャルYoutuberの集うイベントでも司会に長けているとか話題の安定性が担保されているような専門性の人材が出てくると、そういう場で活躍のきっかけが出てくる可能性はあるのではないだろうか。
数はおそらく今後も増える。Youtubeだけでなく、視聴者側の環境も変わって、3D空間で会うような状況も必ず増えてくるだろう。その時にどうやって生きていくか。個性を出していくかという意味で専門性はきっと重要なキーワードになるはずである。