シェアリングエコノミーでアイドルのコストを下げてみたら、ハローキティ先輩に遭遇した
前回、トークンエコノミーとクローズドコミュニティでアイドルの"価値"を循環させる新しい社会というのを考えてみた。その中で少し触れたのだが、今後の社会というのは、B2B、B2Cではなく、C2C、消費者と消費者が直接的に繋がっていく社会が始まる。
その1つが、シェアリングエコノミーであり、既にみんなが使っているメルカリはその先駆けである。口紅なども気になって買ったものの1度使って放置していたものをメルカリで売るとお金になる、欲しい人は安くそれを手にすることが出来る、"モノ"を循環させていくエコロジカルな仕組みである。
シェアリングエコノミーを突き詰めていくと、いかにコストを下げていくかという方向になる。住む場所、車、店舗、様々なものをシェアすることで、それを所持するコストを下げるのだ。
お金がないというアイドルにシェアリングエコノミーの考えを持ち込んだら、もっとアイドルをするコストを下げることが出来ないだろうか、と思ったのだ。
【楽曲をシェア?】
もはや追い切れない数のアイドルが増えているということは、追い切れない数の楽曲が増えているという証拠である。作られた楽曲は全国的なイベントなりインターネット上で積極的に情報を追わない限り、日の目を見ることもない。そのまま死蔵されていくことも少なくないのではないか。
楽曲の制作費は、アイドルにおいて安くはないお金だ。ピンからキリまであるものの、安くても、トータル3万近くになる。このコストを下げたい。
オリジナル楽曲というのは、得てしてそのアイドルのためのものと考えられてきた。だが、これをシェアして、メロディは同じものの歌詞や編曲、パフォーマンスが変わることで、また違う魅力が生まれる可能性があり、なおかつ曲を得るコストを下げることが出来る。
・発想の発端はHIPHOP
面白い試みだなと思っていたのは、HIPHOPに『KING OF KINGS』というバトルイベントがある。MC漢率いる9sari Group主催のイベントなのだが、ここではバトルに使われたトラックはその勝者が持ち帰って利用出来るビートゲットシステムというものが採用されている。当然、このイベントに出る資格自体国内の様々なバトルイベントで優勝した人間のみだし、そこで使われるトラックは内外の著名なビートメイカーの作品だ。
また、HIPHOPでこの数年流行っている文化としてビートジャックというものがある。リリースされたオリジナル楽曲のトラックに自分達のラップを乗せて、スキルや作品性を提示する方法だ。アーティスト側はバズを狙えるし、KOHHやAKLOはビートジャックによってその優れた作家性を知らしめた。
・ただのカバーか、新たな作品か
日本はカバーに対する作品の評価が厳しいように感じる。オリジナルのイメージ、その時の感想を至高と置いている。それが例えば、同じグループで新しく入ってきた時にすらなんか違うとか言い出すのだ。
だが、アイドル界において、自然発生的にこの現象は起きてきた。かつてのnerveや初恋サイダーは使用権利がきちんとクリアされてたかすら分からないレベルでみんな歌っていた。
そこをもっと分解して、シェアされた楽曲を生むことで、楽曲と文化の新しい関係を構築出来るのではないか、と思うのだ。
AKB48の公演楽曲は様々なグループ、様々なメンバーで歌い継がれているが、スキルや方向性によって趣を変化させる場合があるし、場合によっては歌詞が書き換えられる。@JAMで「君のことが好きだから」が連発される事件が発生したが、HKT48は「君のことが好きやけん」に歌詞を変更している。原曲のオリジナルメンバーの指原と多田が加わった後に、HKT48らしさを出すため、歌詞を変更して公演に採用をされたといういきさつがある。
あるいは、1グループだけでは、2万円分の楽曲しか作れないが、5グループでお金を出して、10万円分の質の高い楽曲を購入出来たら、アイドル楽曲の質が変化する。さらにそれを利用する場合には、使用料を発生していけばペイすることも可能だ。
以前、知り合いと話していた時に、解散したグループの楽曲がもったいないという話になった。nerveなんかもそうだが、転校少女*には古森結衣が在籍したことでGALETTeの名曲「じゃじゃ馬と呼ばないで」が歌い継がれている。(元つりビット小西杏優が加わったんで、「プリマステラ」歌ってくれませんか……)こういう楽曲もこのシェアのシステムに乗せて、アイドル文化として新たに利用をしていく流れになれば、優れた楽曲を眠らせずに済むのだ。
【スキルをシェアする】
シェアリングエコノミーの代表といえば、クラウドワークスやココナラのようなスキルや仕事をシェアするサービスである。アイドルの楽曲制作コストをシェアすることで下げる方法を考えてるうちに、アイドル自身や運営自身のスキルもシェア出来るのではないかと思いついたのだ。
例えば、楽曲を作るスキル、マスタリングするスキル、作詞をするスキル、デザインをするスキルだったり、衣装を自作するアイドルも少なくないし、振り付けを自分で考えているアイドルもいるだろう。これを全部、シェアリングエコノミーに乗せたら、自分達で曲は作れなくて困ってるアイドルを助けるきっかけになる。
または、アイドル経験のある子がより良い接触のためのティーチングをするスキルを売ったっていい。分かってない運営よりよっぽど頼りになる気がする。
アイドルビジネスというのは、一般的な音楽業界とは違ったエッセンスが必要な瞬間がある。そこをキャリアやセンスをスキルとしてシェア出来れば強くなる。物を作る時に思想やテーマを共有するところが一番時間がかかると言われている。そもそも同じコミュニティにいれば、その時間的コストさえ削ることが出来るのだ。
【究極、食品をシェアする】
お金なくて生活出来ないアイドルのために、最後に紹介したいのだが、月額1,980円で、1日2回まで近くの店舗で余剰食品が出たら食べに行けるフードシェアリングサービス「Reduce GO」である。
SDGs、持続可能な開発目標として、2015年国連サミットで採択された2030年までの国際目標である。17個の大きな目標が掲げられており、そのうちの1つの解決策として、余剰食品の再分配は注目をされている。
東京都内はいち早く様々なサービスが始まっているが、このReduce GOはアプリで情報を知れて、月額固定というところが分かりやすい。店からすれば捨てるだけの食材なので、痛手が無い。
SDGsについて、めちゃめちゃ分かりやすいのが実はハローキティ先輩のYoutubeチャンネルだ。仕事を選ばない先輩だが、こんな仕事もこなすのである。さすが先輩………
アイドルというのは一般的に3年くらい続けると辞めるかどうしようか迷うらしい。様々な要因はあるだろうが、コストを下げて、資産の再活用を進めることでもっとゆるくアイドルを持続させる社会に繋がるのではないだろうか。
個人的に、再活用してほしい資産は事務所を辞めた加護亜依さんである。早くアップフロントは保護してください………