オープンソースでデータを公開する側に立って初めて知った、みんなに作ってもらうためのUX Tips集
先日、ペットボトルキャップで回すガチャガチャ、循環ガチャの大型版を公開しました。
これは、地域のペットボトル回収を促進するために、広島のファブラボと、リサイクル業者さんたちと一緒に考案したものです。全国でも似たような活動が伝播してほしいという思いから、無料&オープンソースで作り方を公開しています。
公開後2年間で全国20箇所以上で導入され、直近1ヶ月でも30回近くのダウンロードを記録しました。
このプロジェクトは、3Dプリント、レーザーカットやNC加工など、様々なデジタルファブリケーション機器を扱うことを前提としており、公開するうえで様々なオープンソースプロジェクトを参考にしています。
「データとファブリケーション機器さえあれば、地球上のどこでも同じものを生成できる」というのはまったくの建前で、人が公開しているデータを使って手元で再現してみようとすると、実際にはうまく作れない落とし穴がいくつもあります💀
幸いなことに、公開までの準備をする中で、これらの落とし穴を巧みに回避し、「とてもユーザーメイカーフレンドリーだ!」というプロジェクトにいくつも出会うことができました。今回は、自分がいざ公開する側に立ってみないとわからなかった、先駆者の皆さんの様々なTipsをまとめてみます。
出力の再現性を上げるためにできることは全部やる!
印刷の向き、出力ピッチも一緒に指定する
数あるファブ機器の中でも、3Dプリントは最も再現性が確保しづらいツールの一つです。スライサや機種によって印刷設定も異なれば、気温や湿度などの外部要因によっても印刷結果が左右されてしまいます。
そのため、stlデータだけを公開するのではなく、印刷の向きや、ノズルの径などを一緒に指定したほうが、より丁寧です。
なるべくサポートを使わない
3Dプリント時にオプションで付けることのできるサポートは、確実に印刷を成功させてくれる一方で、綺麗に取り外せないと、のちのちのトラブルの要因になったりします(特に歯車などの機構部品ならなおさら)
そのため、3Dモデルの中にオーバーハング(中空に浮いてる部分)があっても、サポート材を使わずとも期待通りの印刷結果になる工夫を凝らしたプロジェクトも見られました。
3Dプリント部品と市販の金属部品を組み合わせる
3Dプリント部品と市販の金属部品を組み合わせると、接合精度を飛躍的に高めることができます。その時にはハンダごてなどを利用して穴にナットなどの部品を埋め込むワザがよく使われます。
FABスペースに置かれた機器のサイズ・スペックに思いを馳せる
データを用意していると、ついつい自分の手の届く範囲のファブリケーション機器を前提にデータを作りがちです。
しかし、データを受け取って出力する立場になって考えると、例えばデータが大きすぎて自分が使ってる機器で出力できないと分かるや否や、途端に作る気をなくしてしまいます。
レーザーカットデータを公開する場合、最大部品のサイズはA3サイズに収まっているか
FABスペースのレーザーカッターといえば大型のものをイメージしがちなのですが、中型のA2-3サイズのレーザーカッターを導入しているFABスペースも多いです。加工範囲の小さなレーザーカッターも想定すると、作ってもらえる拠点が増えました。
ソフト化できるノウハウはとことんソフト化
組み立てマニュアルを作っていると、
「少しゆるめにネジを締めます」とか、「軽く遊びを残しておきます」といったような、曖昧な言葉でしか表現できない箇所が出てくることがあります。特に3Dプリンタのベルトの締め具合といったような、プロダクトの精度に影響の出るものであれば、そういった表現の曖昧さは致命的な不具合をもたらすこともあります。
そこで、3DプリンタPrusaの組み立てキットでは、ベルトの締まり具合を可視化できるweb Appを用意していました。
おまけ:公開するプラットフォーム
3Dプリントモデルを公開するならThingiverseやPrintables, cults3d
そのほか様々なFAB機器を使うデータが入ってくるならwikifactoryやinstructables、
そのほかにもbooth、kofi、patreonなど、様々なデータ公開媒体があると思います。
ガチャガチャのデータ公開にはGumroadを使っています。
最初はGithubを使っていたのですが、ダウンロード数や、誰がダウンロードしているのか分からないといった部分に不便さを感じ、今に至ります。
本来は3Dモデルやソフトウェアのプラグインなどを販売するプラットフォームですが、ダウンロードした人に対してデータの更新やお知らせなどを送るのにも便利です。
いかがだったでしょうか?
なかば職人技ともいえるTipsもありましたが、こういったノウハウがオープンに公開されているのは、やっぱりハードウェアオープンソースの魅力なのかなと、公開データを用意していて再実感できました。
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