LOCUSTコンテンツガイド(映像4)黒沢清『スパイの妻』 伏見 瞬
『スパイの妻』が物足りなかった理由を考えている。
いや、普通に考えれば「周りの人間の評価がめっちゃ高かった分、期待値上がりすぎてた」が理由だしそれで間違いないのだが、それだけではない。
黒沢清が監督した映画には、常に理解不能さがつきまとう。何故主人公はこの行動を取ったのか、何故急にあの男が現れたのかといった因果が説明されないことが多々ある。観客はそれを受け入れて映画を観続けるしかない。不親切で、物語への移入を許さないのが黒沢清だ。そして、理解不能さと映像的強度が掛け合わされると、そこにある種の「気持ち悪さ」が生まれる。これは『CURE』『叫』『クリーピー 偽りの隣人』などのホラー・スリラー系の映画に限った話ではなく、『トウキョウソナタ』や『岸辺の旅』のような家族や恋愛を題材にとった映画も同様に気持ち悪い。黒沢清映画はほとんどどれも素晴らしいけれど、どうにも人に薦めにくいと僕が感じているのは、この「気持ち悪さ」を受け入れられない人も多くいるからだ。
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