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LOCUST 旅行記(会津・中通り編) 河野咲子 ①7月16日(土)郡山、田村市
LOCUSTは、この度『LOCUST vol.6 会津・中通り』を刊行いたします。3年ぶりに執筆者全員で旅行をして作った号となります。
ロカストプラスでは本誌の刊行に先立ち、その旅行中に書かれた旅行記をご紹介します。第3弾は編集部員・河野咲子による旅行記です。
なお、過去の記事では本誌の巻頭言を無料で公開しております。『LOCUST』がどんな雑誌か、どのようなことを意図した特集かについては、こちらの記事をご参照ください。
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桃、モモ、Momo
郡山着。ホテルに荷物を置く。「Go Go Round This World! Books&Cafe」というブックカフェに谷さん(谷美里)が向かっているというので、わたしもおなじお店にむかってみる。少し先んじて同じカフェに出向いていたらしいわかしょさん(わかしょ文庫)とすれ違いながら、カフェに到着。ブックカフェには旅の本やZINEがたくさん揃っている。谷さんと落ち合い、わたしはつめたいカフェオレをオーダーする。谷さんが注文したドライカレーを、三分の一くらいわけてもらってたべる。
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そのあと郡山駅に集合し、執筆陣が10名集まっているのを眺めてみると、なぜかへんてこなTシャツを着ているひとが多い。
みんなが揃うのを待つ間に「福島の桃にモモをかけて、エンデの『モモ』論を書くことしか思いついていないんですけど……」と伏見さん(伏見瞬)に相談をもちかけると、なぜかその語呂合わせが伏見さんにちょっとウケてしまう(だからといってモモ論を書いてよいわけがない)。
レンタカーショップまで連れ立って歩き、全部で3台の車を借りる。この日は郡山にほど近い田村市に出向こうということになっていた。なんとなく集合場所を田村市歴史民俗資料館ということにして、車は出発する。わたしは谷さんと一緒に、岩崎さん(岩崎広大)の運転する車に乗せてもらう。
茅葺き屋根の——
それほど遠いところではなかった。田村市歴史民俗資料館に到着すると、「外出中」の掛札がかかっている。外出中とはつまり、管理者はどこか近くにいて、まもなく戻ってくるということだろう。だれかが電話かなにかでそのひとに問い合わせてくれたのだろう、しばらくすると資料館の主(あとから推測するに、彼の名はKさんという)が姿を現す。
資料の整理がぜんぜん終わらなくて、と言いながら、Kさんはいそいそと資料館の鍵をあける。
取り立てて大きな施設ではない。ずっしりとした茅葺き屋根の家。江戸時代後期の農家住宅を移築復元した建物なのだといい、そのなかにさまざまな生活道具が展示されている。Kさんがからくりのハエ取り機やおんぼろの蓄音機を戸棚から持ってきて、素手でねじを巻きながら、独特の諧謔にいろどられた弁舌であれこれと説明をしてくれる。
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