【ロカストメルマガ再録選】ロカストだより 第1回「海ほたるとディズニーランド」 谷頭和希
このエッセイは、LOCUST+の前身、LOCUSTメルマガにて配信された文章です。2019年に書かれたこの文章は、豪華客船をモチーフにしてリニューアルされた海ほたると東京ディズニーランドについて、「アルコール」を切り口として考察しています。
「豪華客船」などというと、現在では日本のコロナ騒動における最初の話題であった「ダイヤモンド・プリンセス」号のことが頭をちらつきます。「隔離施設としての豪華客船とテーマパーク」というのはコロナ時代の今、もっと考察の余地があるとも思えます。
といっても、今回はあえて加筆を加えず、コロナ以前のある旅の記録としてお読みいただければ幸いです。
私用で「海ほたる」へ行った。東京湾を横断し、川崎と木更津を結ぶ東京湾アクアラインの真ん中に浮かぶ人口島のパーキングエリア、「海ほたる」である。たぶん、東京近郊に住む人ならば多くの人が訪れたことがあるだろうこのPAに改めて訪れたのは、取材のためである。なぜ、今になって海ほたるを取材するのか。それは2年の4月に海ほたるがリニューアルオープンしたからである。
そんなわけで、私はまだ肌寒い空気が支配する春先の海ほたるに来ていた。海風が強く吹き付けるテラスで、360度のオーシャンビューを眺めながら遥か広い東京湾を眺める。「東京湾に浮かぶ豪華客船」というのが海ほたるのコンセプトらしい。確かに、階層が段々と積み重なって堂々たる5階建てを成すその姿は、世界一周を標榜する豪華客船にも見えてくる。
このコンセプトからも分かるように、海ほたるはテーマ性を強く持っていて、本来この建造物に与えられた「パーキングエリア」――ドライバーのために設けられた高速道路の休憩所――という役割を逸脱して、一種のテーマパークのような趣さえある。
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