ダブル・サイレンス——金沢21世紀美術館をめぐる二重の旅行記(前篇)河野咲子&南島興
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深夜の長電話を終えて、寝ようとしても、喉がうずき、夢を見ようとしても、起きてしまう。気づくと、午前6時。もうシャワーを浴びて、寝て起きたことにしようと思う。
大学生の頃、よく乗っていた深夜バスから降りると、いつもこんな気分になる。念願の目的地に着いたのに、すっかり疲れ切っている体。だから、今日も寝たことにして、誰もいない金沢駅に向かう。
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