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ロカスト日記 3月30日(月)

 異常事態に人が置かれる時、まず言葉から失われるのは個人の具体性です。大きな現象は人々を共通の渦の中に飲み込みます。誰もがその渦中にいるがゆえに、誰にでも理解できるような単純で抽象的なイメージと言葉ばかりが流通し、代わりに、具体性を伴った言葉はふさわしくないものとして切り捨てられます。コロナウィルスとも日本政府の対応とも関係のない、誰とでも共有できないものは、個人的な日記や心の奥に消えていく。けれども、僕らがインターネットでのやり取りに求めているものは、共有できないものを共有する試みではないでしょうか。卑近な例かもしれませんが、誰にも言えなかった悩みや趣味を誰かと共有できることこそが、インターネットで人々が物理的距離を超えて繋がる中で起きた最良の喜びではないでしょうか。その体験が、僕にとってはネットにおける最大の”革命”であったと思います。 
 今回LOCUSTでは、編集部数名の日々の記録を公開します。もともとLOCUSTは、異なる立場や異なる趣味嗜好を持つ人間が”群れ”となる中でそれぞれが変化していく現象を、活動のエネルギーとしてきました。今回のコロナウィルスの流行に端を発する混乱の中で、大きな”群れ”の場に組み込まれた我々(ロカストのメンバーだけでなく、社会を構成する人々全てを含む「我々」です)は、具体的な生活や思考の違いを共有することで、自分自身を大きく変化させるような”好機”に恵まれたと感じます。具体的な個人の体験の言葉が、非常事態の渦に飲み込まれている時にこそ、より豊かな共有をもたらす。僕らの間に生まれた関係が、僕ら全員を変えていく。LOCUSTはその可能性に賭けるために、それぞれのささやかな日々の記録の”群れ”を、みなさんと共有します。

LOCUST編集部 伏見瞬

3月30日(月)


 午後は外勤先のクリニックで勤務する。患者さんは、就任以来一番少ない。
ぽつぽつと来るのは、もともと予約の入っていた患者さんと、花粉症の薬をもらいにくる人だけ。
 最近、患者さんからの相談で一番多いのは、運動量、活動量が確保できないという悩み。ジムで運動してたけどもうできない。ウォーキングしてたけどそれも続けていいものかと思ってやめている。家にいると暇なので食べてしまう。体重がどんどん増えていく。等々。自宅退避していると座りっぱなしの「不活動時間」が長くなってしまいがちですが、こまめに立って歩いたりするよう意識してください。 Youtubeでヨガとかストレッチの番組見ながら運動してる患者さんもいます。などとアドバイスしたりしている。平時から、家から出る用事がないことは、それだけで思った以上に活動量を低下させている。家から出られないのであればなおさらだ。一方で、我が身を振り返っても、家から出られないことが時に動きたくない人にとって格好の言い訳にもなる。いろいろな自宅退避がある。刑務所の受刑者。犬小屋につながれた犬。
 その次に多いのは、私はまさに「ハイリスク」なのではないでしょうかという質問である。
 志村けんが死んだのはショックだったね、俺と同い年で、俺とおんなじ酒飲みで、肝臓悪くて…。仰るとおりですと答えるしかない。

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