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特別寄稿:都市は都市の夢を見るか? Kohyoh Yang

ロカストはある具体的な土地に着目して批評をしてきました。今回は、東京の中心ともいえる「新宿」について、Kohyoh Yangさんに批評していただきます。Yangさんは今年の3月に東京大学工学系研究科建築学専攻を修了されて、現在は都内設計事務所で働かれている方です。アカデミックな建築知識をお持ちであると同時に、ご自身が新宿で育ったという実感をもとに独自の新宿論を構想されています。本稿では、「ゴースト」というキーワードをもとに、これまでの新宿とこれからの新宿の姿を浮かびあがらせています。都市が都市の夢を見るとは、どんなことを意味しているのか?ぜひ、読みください。なお、本寄稿はネイキッドロフトでのトークイベントとの連動企画になります。ご興味持たれた方は、こちらもアーカイブ視聴可ですので、ご覧ください。(南島)

 2020年現在、しきりに都市の郊外化や地方移転と言った言葉が唱えられている。郊外や地方というが、もともと都市とは郊外や地方からの移住者を引き寄せて大きく成長していくものであり、同時に移住者となった新住民は、かつての自分のふるさとに近い栖を新しい都市の中に探し求め、都市を自ら同一化していくものであった。石川啄木が上野駅にふるさとの「そ」を聴きに行くと詠んだが、平成生まれの筆者にとってはそれは新宿駅なのかもしれない。とはいえ、筆者は2007年まで西新宿に住んでいたが、今も昔も変わり続ける西新宿へ、ある種の都市の「夢」を見続けている何者かの存在を感じずにはいられない。

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