北出の日々 第4回 「部屋人間」の誕生 北出栞
「生活」について批評する、として始まった本連載。
これまで三回分書き進めて来たことに加え、COVID-19(新型コロナウイルス)パンデミックにより「生活」のあり方が誰にとっても変化している中、改めて筆者にとって「生活」とは何か、「批評」とは何かということを明確にしておきたいと思う。
前回までに「機械のようになりたい」などと書いていた願い。これを改めて正確に言うと、「身体」を透明にしたい、純粋に思考的な存在になりたいということになる。
小さな頃から極端に情緒的で、他人の感情の揺れをそのまま自身の感情の揺れとして受信してしまう性質だった。よくあったのは同じ場に居合わせた誰かの怒声を「(自分とは関係なく勝手に)イライラしているのだ」とは解せず、純粋な負のエネルギーとして受け取り泣き出す、といったことだ。
わけのわからないタイミングで泣き出す自分を見つめる、あっけにとられた周囲の人の表情。そんな顔を他人にさせてしまう自分が嫌いで仕方なかった。感情の受信機としての「身体」に対する拒否感は、そのようにして少しずつ育っていったのである。
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