見出し画像

モンゴル食紀行/食思考 第5回 食行動の環世界 太田充胤

「モンゴルにはつい最近まで、『美味しい』という概念がなかったんです」

ムギさんがさらりと垣間見せたこの未知の世界観に、天地がひっくり返るような思いがした。美味しい、という概念なしに成り立っている食の世界とは、いったいどのようなものなのか、にわかには想像ができなかった。

「モンゴル人は、お腹いっぱいになることが大事。羊の肉を寸胴に放り込んで、煮込んでスープにして、塩で味付けする、それだけ。スパイスとかも使わない。日本に留学して、はじめのころはご飯が少なくて本当に辛かったです。でもそのあとだんだん、日本人がどういうものを『美味しい』と思うのかがわかってきた」

ここから先は

2,450字
毎月、様々なテーマの記事がご購読できます。各記事は単体でのご購入もできますが、2本以上読まれる場合は定期購読がお得です。

LOCUST+

¥500 / 月

批評観光誌『LOCUST』の有料マガジンです。 毎月、LOCUST編集部を中心とした執筆人が、コラム・エッセイ・マンガ・小説などを寄稿しま…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?