
①:くろ
くろは、ろこさんと暮らしてしばらくしてから、友人から(厳密には友人の友人)譲り受けた黒猫である。
友人の友人の飼い猫が出産し、くろ以外の貰い手が決まり(当の友人も1匹譲り受けた)あと一匹どないかならんかなぁと相談された友人が私に白羽の矢を立てたわけである。
確かに、赤ちゃん猫のくろは赤ちゃん猫特有の可愛らしさが皆無で、引き取り手がないということに納得した。
手足が異様に細く、全体的に毛が薄く、お腹が張っており、目だけがギョロギョロしていた。
そして素早く動き回っていた。
猫というよりは大きい蜘蛛のような足の動かし方が、ちょっと怖いくらいである。
去勢前まではすごい運動量で、何かに取り憑かれたかのように部屋中を走り、ついには壁を走るなどとてつもない脚力を見せつけていた。
しかし、去勢してからのくろは、それはそれは慎ましくなり、ろこさんの腰巾着に成り下がったのである。
常にろこさんに擦り寄り、時に引き摺り回され(マウントとられまくり)、もっと引き摺り回してくれと言わんばかりに首筋を差し出していた。
とにかくろこさんを盛り立て、後に仲間となる若い猫たちの世話を焼き、自らは前に出ず控えめで、さながら戦国屈指の二番手、藤堂高虎のようである。