骨を掘る男
映画館が暗転して、具志堅隆松さんのヘッドライトのみが映し出される。そこはもう暗いガマの中。土を掘る音と、具志堅さんの柔らかい声が耳元で聞こえる。とても静かで寂しい場所。
カットが変わった時の豊かな光と緑が重く感じる。遠いけど、同じ国の一部である沖縄で亡くなった人々。怖かっただろう。痛かっただろう。とても悲しくて涙が出てくる。でも会った事のない何万人の人々の死を、顔を浮かばせて悲しむことはできない。
私に何ができるんだろう。
戦争はダメだ、悲しい、恐ろしい、痛い…想像すると途方もない感情になる。だからといって、私にストライキができるのか?土を掘り行動的慰霊ができるのか?
今の私にはできない。悔しくて虚しくなる。
目の前の価値に手を伸ばして、命への価値が揺らいでしまう。
そんな自分に改めて気付かさせる。
具志堅さんの眼差しから、言葉から、自分の中で大事なものは何なのかが浮かび上がる。
「戦没者に対する最大の慰霊は、二度と戦争を起こさないこと」