鳳凰梨園(4886字)
「とうとうお呼ばれしちまった。いよいよ最期だな」
宿舎へと戻る貨物車の荷台で師匠はそうつぶやいた。亡くなる前日のことだった。翌朝、普段なら一番に起きているはずの師匠の姿が見えず、私が部屋を訪ねると布団の上で既に息を引き取っていた。師匠は私たち〝栽培者〟の中で一番の年長者で、若い頃に果樹から転落したことが原因で片足を悪くしていた。本来そうなると栽培者としてはお払い箱なのだが、幸運なことに師匠には果樹栽培や農業機器に対する知識が豊富だった。その為に果樹園の〝管理者〟たちは栽培者