読書ノート1
2021.7.23 死刑囚最後の日/ユゴー/岩波文庫
〇感想〇 一瞬ごとに迫る死刑への恐怖が読者の心に迫る。臨場感があるのは誰にでも当てはまる日常のささやかな暮らしと、生を奪う刑との境界がまだらで恐ろしさを感じるから。読んでいて幾度「もし自分が」と考えたことか。
この本は死刑に反対する目的で書かれた。しかし当時のフランスは比較的すぐに死刑になっていたのに比べて、現代世界でも珍しく死刑のある日本ではそう簡単に死刑になるものではない。だからこの当時の人が当時の死刑に反対することと、現代の死刑に対する批判が必ずしも一致するばかりではないが、主人公の「命を奪っても何にもならないだろう!いっそ働きたい!」という意味のセリフは印象深く、時代を超えても貫徹する生きることへの欲望を示されたように思えた。死んでしまったら更生できないのだ…死刑を許すということは自分も縄にくくられる可能性があるということだ。当たり前だが首元がぞっとするような視野を与えてくれる本だった。
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