読書ノート4
2021.10.21 「クオリアと人工意識」茂木健一郎2019/講談社現代新書
この本ではクオリア、AI、脳科学などの諸問題が概略的に平易に書かれていた。クオリアについての本は久しぶりにお出しになったそうだが、こんなに面白い話題なのだからもっと本を書いてほしいと思うばかりだ。(もっともインターネットで論文は読めるのだがそのための力は私には不足している)
・クオリア研究の肩身の狭さを嘆かれていた。アカデミックの中での権威の序列を知った。人文系の学問も同様か
・昨今のAI技術をめぐる研究、方向性の概要をかいつまむことができた。クオリア的切り口は一般的ではないとのことだが、こんなにも自明の「クオリア」について論じることは容易ではないことはもどかしいばかりだ。脳の電気信号をいくら観察しても、私が今感じている「布団のふわふわした質感」は必ず取りこぼされる。絶対に他人が感じることのできない性質のものについて語るための世界の姿勢は整っていないように思える。
・AI研究を突き詰めるほど人の脳が資源に指定されていくという指摘を面白く読んだ。また将棋やチェスが強いスパコンがかなりエネルギー効率が悪いという事実は、仮想世界や空間に区切りをつける可能性を感じさせた。(人の脳がチェスをするのとスパコンが計算するために必要なエネルギーの差は驚くべき物だ)
•資源の有限性を無視してAIを語っても砂上の楼閣になりかねないのだろう。初めて得た視野だった。ビットコインなどのブロックチェーンを「維持」するための電力は確かに、無駄に思わざるを得なかった。
・身体性への帰着
人工知能はできるのか否か、機械に意識はコピーできるのかといった問題の著しい視野の欠落は身体性である。なんと機械の体は痛みや痒みも何も感じられない!