読書ノート2

2021.8.11   遅いインターネット/宇野常寛/幻冬舎

 この本は本屋さんでたまたま手に取った本だった。タイトルを見てインターネットの速度に注目している人がいて面白い、どういうことだろうなと気になって前書きを読んだところ興味を持ったのですぐに図書館で借りた。

私にとって社会学系の本を読むことは初めての経験で勇気のいることだったけど経験の浅い私にも問いを投げかけてくれるこの本はそれだけ力があるのだろう。また数ある本の中から私の興味と合致したものを読めたことが喜びであった。

インターネットの始まりから現在のSNSが流行するまでの流れに社会的な意味付けがなされていて、私が生まれる前の時代のことから今までのタイムラインを一気に眺めることができた。

 特に面白かったところは代表的なSNSを幻想論に当てはめていたところだ。Facebook、Twitter、LINEはそれぞれ自己幻想、共同幻想、対人幻想だと言うのである。昭和の評論家の吉本隆明が示していた幻想論が元になっているとのことで、彼の思索にも興味がわいた。

 もう少し抽象化した感想を言うと、これは自分が実際に生きている社会をメタ的に眺める視点を手に入れる方法を示してくれた本だったのではないかと思う。じつは今まで私は古典作品ばかりを好んで(ほとんど強いて)読んでいたのだが、今この社会への視点も、比較するまでもなく重要であることにやっと気が付けたのだった。とはいえ中高生のころに力を入れて古典作品に触れたことは確実に意味を放っていて、これから自分の生きる世界への視野を広めていくことに助言を与えてくれるだろう。

 それにしても本屋さんで本を見る良さは偶然の出会いにある。「遅いインターネット」との出会いは私の人生の中でも深い意味を持つセレンディピティであった。



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