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SPIを立ち上げた大沢武志氏が目指した心理学的経営とは①

リクルート創業メンバーというと江副浩正氏が有名ですが、大沢武志という方をご存知でしょうか。1962年に日立製作所入社後、1965年に日本リクルートセンター(現リクルート)へ入社しました。以後、多くの学生が受けることになるSPIを開発。1993年に氏の考えをまとめた心理学的経営が刊行されました。

心理学的経営とは

マネジメントの主流だった官僚制組織論は無駄を省いて効率的なシステムを志向していましたが心理学的経営は人間の現実(無駄な情緒や感情を持つこと)をあるがままに受け入れることを重視しています。ただし感情は相手や時間、気分などによって異なります。感情はときによって相手や気分、時間によって異なる感情が表れるものです。その際に何が正しいか間違っているかは単純には判断できません。人間のあるがままを受け入れることは難しいことです。

では個性を受け入れ、満足度の高い状況を作り出すにはどうしたらいいでしょうか。例としてアメリカの心理学者ハーズバーグの研究から人々に強い満足感をもたらすのは達成欲求や成長動機による主体的な行動に起因することが明らかになりました。満足度を高めるのは給与や処遇などの外部報酬ではありません。

さらに多くの組織は個を埋没させたり病弊させています。それを打破するには小集団(チーム)の行動が風土の規範も大切です。組織風土が人間の行動の拠り所となりますが、それは決まったルールがあるわけではなく互いの暗黙の合意から生まれた規範です。それは風土、または組織風土、組織の遺伝子とも呼ばれます。この風土はときに経営者のメッセージよりも人の行動を支配し、無意識の中で行動に影響を及ぼします。

つまるところ1人1人に満足感をもたらし個性を尊重することが人間のあるがままを受け入れるために重要なことなのです。人間らしさを大切にする心理学的経営は満足度をもたらし個性を尊重することを目指すものになります。

ティール組織との共通点

主体的な行動によって達成欲求や成長動機を高める心理学的経営はティール組織の自分で決断することで責任感や達成感を自覚するSelf-managementの考えに通じ、個性を尊重し人間らしさあるがままを受け入れる考えは弱さをさらけ出して自分らしくいるWholenessの考えに通ずるところがあります。ティール組織が提唱されたよりも昔の1993年から既にWholenessとSelf-managementに通ずる理念が日本で実践されていたのです。

もっと言えば古くは山本五十六など日本では昔から人材育成や組織風土への檄を持っていました。その考えは心理学的経営に現れてきます。

心理学的経営の課題

ただし個性を尊重するにも問題点がいくつかります。モチベーション・マネジメントの問題。チームと人間関係の問題。組織の活性化の問題。リーダーシップと管理能力の問題。適正と人事の問題。個性の問題。それらの問題にどのように取り組むべきかをこれからまとめて行きたいと思います。

モチベーション・マネジメントの問題

最初の問題はモチベーションです。これまでブルーカラーへのモチベーション調査はあったものの専門技術者のモチベーション研究はほとんど例がありませんでした。そこでアメリカの心理学者ハーズバーグはホワイトカラーを対象として仕事に対する態度や満足感についての面接調査を実施しました。

調査前までは1つの要因が充足されていれば満足度は高まり、逆に欠損していれば満足度は下がると考えられてきました。それが研究から仕事で幸せを感じる職務満足度を高める要因職務不満足度をもたらす要因は異なることが分かりました。

職務満足度をもたらす要因は以下の仕事そのものに関連しています。
・達成(仕事の中で成し遂げる達成感を体験したとき)
・承認(上司や仲間から認められたとき)
・責任(責任の重い仕事を任されたとき)
・成長(自分の成長が実感できたとき)

逆に職務不満足をもたらす要因は仕事ではなく環境要因に関連があります。
・作業条件
・給与
・会社の制度

職務不満足が解消されても満足度を感じにくいが解消されなければ不満度をもたらします。つまり環境要因は不満を防止することしかできません。

では、どうしたら達成承認責任成長に結びつく影響を与えられるでしょうか。このメカニズムを研究した職務特性モデルというのがあります。このモデルを作り出したハックマンとオールダムはモチベーションが高まる職務の要素を職務設計の5つの次元(職務次元)として整理しました。

①スキルの多様性

必要とされる技能や経験が多様であればあるほど自分の仕事は有意義え価値があり、重要だと感じられること。これによりモティベータが高まる。

②タスクアイデンティティ

自分の仕事がはじめから終わりまで一貫して携わることのできるまとまりのある仕事だとはっきり自覚を持てる仕事はモティベータが高まる。

③仕事の有意義性

仕事の意義と価値と重要度が高いと感じるほどモティベータが高まる。

④自律性

自分の裁量が大きいほど結果に責任を感じてモティベータが高まる。

⑤フィードバック

自分の仕事の成果がどの程度うまくいったのかをフィードバックされればモティベータが高まる。

⑥新しい学習

専門知識を吸収し、高次元の学習を促進する機会を得ることでモティベータが高まる。これはハーズバーグの提唱ではなく著者独自の提言。


仕事の質を高めようとする方法

この職務次元によって仕事の質を高めようとする方法を職務充実と呼びます。つまり職務次元は職務充実向上のための手掛かりとなる。職務充実には2つの定式があります。

①タスクアイデンティティ方式

自分の仕事に一貫したまとまりを持たせてアイデンティティを自覚できるようにする方法です。ある作業の工程を統合し複雑性を高めることでタスクアイデンティティが高まることがあります。

②PlanDoSee方式

まとまった仕事をあるチームに背負わせて、仕事の進め方をチームの意思決定に委ねるという方式です。これはチームの問題に関連していきます。


目標がモチベーションに与える影響

目標は具体的で明確なほど成果を出しやすいことは心理学者のエドウィン・ロックが提唱しています。日本企業では絶対にできそうもない無茶な目標を挑戦させる例がありますが、心理学的理論からすると当人の拒絶反応を生み、やる気を削ぐ恐れがあります。

目標の過程でフィードバックされることが重要です。目標があっても放置されていると目標効果は低減してしまいます。早いタイミングで順調なのか、それとも遅れているのかを伝え、目標への見通しを確認できるようにするべきです。ただし進捗が悪すぎる人に伝えても諦めを生み、良い人にさらなる努力を換気しても効果はあまり期待できません。

チームへの目標設定もモチベーションに効果があります。チーム目標は責任感を生み、さらに個人目標と併用することで個人目標が良い人には効果が少なかったフィードバックにもチーム目標への良い改善影響が生まれます。


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