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八王子出身の僕は「東京出身」と言うことがなんか申し訳なかった。

「どこ出身ですか?」

みんな聞いたことがあるし、みんな聞かれたことがある質問。初対面でも話しやすい、スーパー定番で大人気な雑談テーマです。

この質問に、ぼくは「東京都八王子市の出身です。」と答えます。生まれは違う場所だけど。6歳から18歳まで暮らして、実家がある場所だから。


自信をもって「東京出身」と言えない


人が「どこ出身であるか」を意識するのは、出身地をはなれたとき。僕の場合は、18歳で宮城県の大学に進学したときでした。

大学に行くと、それはそれは色んな人がいました。
東北6県からたくさんの人が集まってきていて、北海道や関東各県あたりの出身者が多かったな。
西日本は少ないけど、愛知や大阪などの都市部出身の人はいたかな。九州出身の人もぼちぼち。

この時、どっさりと「どこ出身ですかタイム」を経験することになります。

当時は、他の地域の市町村名なんてあんまり知らなかったから、みんな都道府県名で回答するんだよね。

「大阪やで。」
「鹿児島でごわす。」
「高知ぜよ。」

地域色豊かな回答が返ってきます

「横浜だよ」
「都道府県で聞いてるから、わざわざ横浜って言わなくていいよ。」

という定番のやり取りも経験しました。
そして、ぼくは

「東京です。」
「…あっけど、東京といっても八王子という西の方で…。」

という言い方をしていました。

あなたの思う東京じゃない


煮えきらない言い方をしていたのは、「東京」と聞いた人はきっと都会をイメージすると思っていたから。

・東京駅
・渋谷のスクランブル交差点
・原宿の竹下通り
・当時できたての六本木ヒルズ

そんな華やかな都会をイメージするのかなって。というか、僕がイメージしてました。

大都会をイメージしてもらったのに、僕はちっともシティボーイじゃない…。申し訳ねえ…。

当時、原宿すら行ったことなく
「いや、高尾の山猿みたいなもんです…。」
そんな気持ちで、言い訳を添えていました。

東京ではあるんけど、あの東京じゃない。
そう。「じゃない方」的に八王子をとらえていました。

この「じゃない方」的な認識は八王子や町田あたりの人にとっては、スタンダードな認識だと思うんだよね。

いつも「山に近いから、都心とは気候が違うよね~」みたいな話しをしていました。

こんな感じで、18歳の僕は

  • 離れて気づいた東京という大きなイメージ

  • それとは異なる八王子

  • 大量に出会ったいろんな生い立ちの人達

  • ティーンならではの他人の目

などなどにサンドイッチされて、自分の出身というものに戸惑いを覚えていました。

あれは、自分の地域的なアイデンティティを急に意識するようになったタイミングでした。

じゃないんじゃなくて違うだけ


2022年にリリースされた【八王子のうた/ヒロミ】では、八王子の「じゃない方」根性がはっきりとつづられています。

八王子は東京なのに 都心に行く時 「東京行ってくる」と言う
八王子は東京なのに 埼玉の方が早く渋谷に行ける
八王子は東京なのに 天気予報はなぜか別枠
八王子は東京なのに 電話番号「03」じゃなくて「0426」

八王子のうた/ヒロミ

「じゃない方」であることを、とてもコミカルに描いています。

「じゃない方」って言っちゃうとネガティブ感あるけど、そこには、優劣はなくて違いがあるだけ。東京だけど「いわゆる東京」とは一味違う。

違いを愉快に語って楽しめる、とても良いよね。
18歳の頃にこの歌があったなら、名刺代わりに出身を、名乗れたかも知れないな。

でも、あの戸惑いがあったからこそ、地域とアイデンティティについてを考えるようになったとも思う。

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