俺達はハローマックとともにあった。
1990年代から2000年前半まで、今の30歳前後はハローマックとともに生きていた。
新聞の折込チラシで、ハローマックの広告だけ抜き取って、金もねぇのにキラキラとした目でいつかコレを買うぞ!という意気込みだけをして、友達の家に行ったら、お前あのゲーム買ったんか!?ってなるやつとか。
とにかくハローマック中心だった。友達の待ち合わせもハローマックだったし、ハローマックにあった10分しか出来ない体験版のゲームキューブとかをひたすら反復でやり始めた。
お陰で友達はビューティフルジョーの1面だけめちゃくちゃにうまくなった。
そんなハローマックのお話。
俺の近所のハローマックは自転車で行くとしたら危険な位置にあり、年に数人がハローマックに行くだけで接触事故に合うような危険極まりないハローマックだった。いや勿論安全な道のりはあるけど人間は近道をしたいものである。
近道をする理由。それはレア抜きである。
当時デュエルマスターズ、遊戯王が爆発的にこの年代に流行っていた。いや、今も流行っているんだろうけど、どの子どもたちもどちらかのデッキは持っているという状態って中々無いと思う。
小学校が終わり、なけなしの小遣いを持ってイニシャルDよろしく溝落としをしてハローマックにつかないと、カードパックからレアカードが抜かれてしまうのだ。
当時の俺の近所のレア抜きは
この赤色のヒラヒラした部分の裏側がザラザラしていたらレアカードが入っているというやつだった。
パックが売り切れることが多々なので、その中でレア抜きをするというのは困難を極める。
今は、プラのカードの表紙が印刷されていたものを持ってレジに行ってアトランダムで店員が渡しているが、当時は普通に店にパックがぶら下がっており、子どもたちが血眼になってパックの裏面を指でなぞったものだった。
そうなると小学校から帰っての行動はかなりスピード勝負。安定を取らずに車のスレスレをマウンテンバイクで走る子どもたちが多発したのだ。
学校の規則で制服でハローマック禁止だったので、それをゲーム感覚でみんな守っていたのか絶対一度家に帰って着替えてからハローマックに行っていた。
そうなるとティア表でハローマックから家に近い家に住んでいるやつはSSだった。俺は近くもなく遠くもないという絶妙な位置だったのでパックは買えてもレアは全抜きされているという状態だった。もうヒラヒラはつるつるしてるのしか残ってないもん。
あとから来たやつはゲームキューブの体験版か、ピコ、ひとりでできるもんの謎パソコンでにんじんを切ることで抑圧していた。別のもので鬱憤、溜まったものを放出しないとハローマックに来たという意味が無いからだ。
勿論、別にハローマックにはカード以外にもゲーム。おもちゃがたくさんあるのでカードショップ専門店ではない。ハローマックでのティア表がカードなのである。
そんな俺はある時からカードを買うのを止めてプラモを買い始めた。プラモなら近くで手を出しているものがなかったので選び放題だったのだ。300円から500円で知りもしないSDのガンダムのプラモを買うことで、いや俺もうカードとか興味ないからというふりをして社会から脱出しました。的なツラをしながら本当はレアカードがほしいという俗的な気持ちと戦いつつプラモを作っていた。500円あってもレアハンターがレア抜きをしてその場でカードの交換の競りを始めてしまうから買うのを途中でやめた。
当時はゲームショップはハローマックとわんぱくこぞうしか無く、わんぱくか、ハロマでゲームを買っていた。わんぱくはハローマックが潰れたあとも戦っていたが今ではパン屋になっちゃった。
ただ、わんぱくとハロマで若干違うところがあり、それは、居心地だった。
ハローマックに行けば少なくとも誰か友達がいたから約束とかしてないやつらがハローマックに集まって、じゃあなんか遊ぼうぜってなると。子どもたちのたまり場になっていた。
今そういうたまり場というのはあるのだろうか?アナログにもアナログだし、今じゃ多分じゃあオンラインでってなるんだろうから、電脳空間がたまり場なのだろうと勝手に推測しているが、それが俺達はハローマックだった。ハローマックに行けば誰かいたから。
ハローマックが靴流通センターになった時は愕然とした。誰もが愕然としたはず。でもそのときには結構大きくなっていて興味というものは多数多方面に向かい、ハローマック以外で事足りるようになっていた。
ただ、でもハローマックなくなったんか…という喪失感は何故か30過ぎた今でも持っている。
靴流通センターであの形を見るたびに、そこに自分がいるように思うのだ。
俺達はハローマックとともに生きていた。そこで悔しさも楽しさも、何にも変えられないなにかを貰っていたと思う。
今はハローマックはガチャガチャの景品だったりとか、Twitter(星野原X)では悲しいツイート(今はポストと言います。)をしているけど、そんなことは正直言わないでほしいと思っている。
だって俺達はハローマックとともに生きてきたから。
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