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北海道周遊パス旅(09) 宗谷本線最北特急で自然厳しい稚内へ。
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特急【大雪2号】は、天候が優れない曇り空の下を駆ける。車窓もグレーの空に白い雪に覆われた農地という、モノトーンの景色にアクビが出るほどに退屈になる。
その内、車窓に住宅が増え、農地が消えたと思うと、程なく進行方向右手から電化された線路が合流した。この後に乗る稚内を結ぶ宗谷本線だ。電化されているのは、途中に函館本線の電車を収容する車両基地があるためで、別に宗谷本線の列車が電車で運用されている訳ではない。宗谷本線が合流して複線電化になり、市街地を高架で走り抜けた頃に車内自動放送が旭川到着を告げだ。
11:50、旭川到着。同じホームの向かいには、12:00発の札幌行特急【ライラック】が扉を開けていた。【大雪2号】の接続列車で、この【ライラック】に乗り継げば特急料金は【大雪2号】乗車駅から【ライラック】下車駅まで通しの料金が適用される。
旭川で次に乗り継ぐ列車は、13:35発特急【サロベツ1号】稚内行。それまで1時間45分も待ち時間がある。私は旭川駅前公園通りを散策したりして時間を潰す。
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昼御飯は、駅の中にある駅弁業者直営の立ち食いそば屋にした。過去に日本一のローカル線だった深名線が走っていた幌加内町の名物である幌加内産そばを使った蕎麦を提供しており、味は確実だ。
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値段は、名産の蕎麦を使っている為か、高めの価格設定。かけそば380円とは、都会の立ち食いそばだったら天ぷらが付いてもおかしくない価格。私はその中から、一番人気のかき揚げそばを注文した。えび天そば530円なのにかき揚げそばが580円なのは強気な価格設定だなと思ったが、出されたかき揚げそばは、かき揚げが野菜たっぷりで、まあ納得出来るかな?といった感じがした。
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(撮影 旭川駅)
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稚内行特急【サロベツ1号】は、キハ261系4両編成。繁忙期にしては短い気がするし、繁忙期は6両編成まで増結出来るはずだが、4両編成で対処できるまで乗客が減ってしまったのか?。指定された席へ行くと、通路側は若い女性が。どこまで乗車するかは分からないが、嬉しい反面気を使ってしまう。
13:35の発車時刻を過ぎたが、札幌からの接続特急が遅れており、しばらく待つと隣のホームに札幌からの特急【ライラック】が到着し、ガラガラだった我が【サロベツ1号】は一気に満席になり、数分遅延で旭川を発車した。
新旭川まで、さっき乗車した【大雪2号】の経路を戻り、新旭川で石北本線が分岐し、列車は宗谷本線を北上。この先線路は宗谷本線しかない。私は雪景色の車窓を眺める。
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上川盆地の田圃も雪の下に埋もれており、白と言うかモノトーンの景色が流れる。しかし、特急列車だから当たり前だが速い。過去に宗谷本線特急はキハ183系【サロベツ】で音威子府~天塩中川間をちょい乗りしただけで、ワイド周遊券で乗り倒した時代はローカル車両を改装したキハ400系や増結車のキハ56系の急行列車時代だから、キハ261系の宗谷本線特急なんぞ初体験だ。宗谷本線名寄までは、線路や路盤が高速向けに改良された区間だけに、飛ばす飛ばす。さっき乗った【大雪】より遥かに速く、昨日乗った函館本線【北斗】や石勝線【とかち】と遜色ない速さに私は心底驚いた。列車はエンジンを唸らせ、塩狩峠を難なく通過していく。
14:30過ぎ、数分遅延で名寄到着。宗谷本線中間駅で最大の都市で、昔はオホーツク海を目指した名寄本線と幌加内町を経由して深川を目指した深名線が分岐していた。ここで結構下車し、指定席もチラホラ空席が出た。
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美深で隣席の女性が下車。ここから先指定席は乗車は無いだろう。私は思いっきり背伸びをし、旭川で買ったソフトカツゲンとビタミンカステーラを開封し、オヤツとしていただく。
そして美深~音威子府間の唯一の交換設備があり、元々は駅だった豊清水信号場で停車した。時刻表を精読したら分かるが、ここで上り特急【サロベツ4号】旭川行と列車交換する。豊清水信号場、今年(2021年)3月に駅として廃止され信号場に格下げされた施設だが、過去に下車した事があるが、駅の周辺は人家は全く無く、利用者が何処から来るのか首を傾げた事があったが、その時点で利用客数が1日1人居るか居ないかの状況だった。廃止発表された時も「あの豊清水なら仕方無い」と納得した程だ。
列車交換で停車したものの、待てと暮らせと【サロベツ4号】が姿を見せないまま豊清水信号場を発車した。どうやら、【サロベツ4号】は、そうとう遅れているみたいだ。数分程度の遅延なら、【サロベツ4号】が来るまで豊清水信号場で待つはずだから。
そして次の停車駅である音威子府に到着すると、車内放送で交換列車の上り特急【サロベツ4号】を待つために、この音威子府で約10分停車する事が告げれれた。やはり大幅遅延だった。
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ホームに下車したら、やはり当たり前だが寒い。しばらく停車するのが分かっているから跨線橋を渡り駅舎へ向かう。駅舎にはこの音威子府から浜頓別・猿払経由で稚内を目指した天北線の記念館があるが、ゆっくり見ている時間は流石に無い。その横には、音威子府名物の蕎麦を出していた立ち食い蕎麦屋があったが、先日この蕎麦屋のご主人が逝去され、もう永遠に食せない。シャッターが閉まった蕎麦屋、いや蕎麦屋跡を見て、ふと過去に食べた記憶が過ぎる。
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ホームに戻ったが、まだ交換列車【サロベツ4号】が来ない。ホームに居た車掌に尋ねたら、【サロベツ4号】は途中で鹿を跳ね、その処理で遅れていると言う。しばらく寒いホームで白い息を出しながら待つと、15:40にようやく【サロベツ4号】が到着。約30分の遅れだ。列車に戻り、稚内行【サロベツ1号】は15分遅れで音威子府を発車した。
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しばらくし、列車の進行方向左手に宗谷の大河である天塩川が並行して流れる。まだ16時前だが緯度が高いから、もう薄暗い。天塩川を眺める内に、車窓は闇に包まれていく。
そして、もうすぐ幌延に着く少し前に、列車は突然急停止した。外はもう真っ暗闇だし、場所を確認したくても、スマホを見れば圏外表示で地図アプリ開いても位置が分からない。困惑している内に車内放送が流れ、乗車している【サロベツ1号】が線路上の鹿を跳ねた事を告げた。
「‥‥‥‥またか。」
私は思った。さっきの旭川行特急【サロベツ4号】が遅延したのも鹿の接触だし、乗車している【サロベツ1号】も鹿と接触した。こりゃしばらく抑止だなと思った。
しかし、幸いな事に作業はスムーズに行ったのか、10分もかからずに運転再開した。私は状況を尋ねるべく乗務員室へ向かった。
まだ20代半ばに見えた車掌さんに聞けばは、宗谷本線は鹿の線路内立入りが多発しているという。そういや過去に釧網本線に添乗していた保線係員に話を伺った事があるが、保線係員が「(鹿を捕獲する)ハンターが減り、鹿の個体数が劇的に増えた。」と言っていたのを思い出した。
「夕張川橋梁っでご存知です?、江別と豊幌の間なんですが、あそこにも鹿が出るんです。私はそこで該当に当たりました。」
車掌さんに言われ、私は驚いた。江別の夕張川橋梁付近は原野が広がってはいるけど、そばに住宅街もあり、鹿が現れると言われてもピンと来ない立地だ。しかしそんな場所まで鹿が現れるとは、私は想像出来ない。昨今の北海道の鹿の生息域は、鹿の天敵とも言えるハンターの減少で、かなり拡大しているのだろう。私は車掌さんの話を聞き、舌を巻いた。
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上り特急との交換遅延、そして鹿の該当等で20分以上の遅れを持った【サロベツ1号】は、まだ17時台なのに夜の闇が辺りを包む宗谷本線を北へ向かった。
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