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10のワガママを叶える日本縦断旅③〜新潟・富山〜
日本縦断の旅は3日目を迎えた。新潟の繁華街に建つビジネスホテルの窓からは、薄鼠色の光が漏れている。空気が一段と冷えている気がした。
ホテルを出ると、人気のない飲み屋街に綿のような雪が多く降り注いでいた。足を滑らせないように、ゆっくりと新潟駅へと歩く。今日は、憧れの観光列車「雪月花」に乗車する。10のワガママ、その一つでもある。
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12月29日11:00 ワガママ②「観光列車『雪月花』に乗る」を叶える
雪が降り注ぐ新潟市街は、さながらスノードームに沈んだ街である。そんな新潟駅から特急「しらゆき」に乗車し、上越妙高駅に向かった。
雪月花は、えちごトキめき鉄道が企画・運営している観光列車だ。地元の美味しい食材をつかった料理と、日本海側を走る車窓を楽しめる人気列車でもある。
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バラのように赤い車体は、雪景色によく映える。
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陽光降り注ぐパノラマの車窓。雪月花最大のポイントだと思う。
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テキスタイルは雪、月、花をモチーフにしているとのこと。
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11:15 二本木駅を探索する
出発からまもなくして、列車は二本木駅に到着した。この駅舎は100年以上前に作られたもので、文化財にも登録されている。
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二本木駅の歴史を解説してくれた。
二本木駅は日本に鉄道が開業してから30年後に出来た駅舎で、木造の屋根と古いレールを用いた鉄骨がノスタルジーを思わせる。
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この鉄骨は古いレールを再利用したもの。
白く塗られた鉄骨には英字が隠れているらしい。
かつては外国製のレールで線路を敷いていた名残りだ。
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車内の明かりをつけるための燃料を保管していた。
イギリス積みのレンガ壁は、古くから存在している証拠。
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一晩で積もったのだろうか。
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今はえちごトキめき鉄道の駅になっているが、元は日本に張り巡らされた鉄道のうち重要な幹線であった「信越本線(のちに北陸本線)」が通る駅だった。二本木駅は、日本の鉄道が若かった頃の生き証人でもあるのだ。
13:00 地元食材の和食ランチ、そしてトンネル駅探索
二本木駅の見学を終え車内に戻ると、座席に三段重が用意されていた。
地元の料亭による、新潟の食材を使った和食ランチの始まりである。
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ズワイガニをふんだんに使ったちらし寿司。
日本海に生息するのどぐろ、弾力のある本ガイ貝、贅沢なラインナップだ。
雪景色を眺め、優しい味付けがされた料理を噛み締めるたび「こんな貴族みたいなことをしていいんだろうか」と思ってしまう。
いや、いいんだ。この日のために2024年は目一杯働いたのだから。
上品な料理を少しずつ頂いていると、列車はトンネルの中にある「筒石駅」に停車した。
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真昼でも夜の底にいるかのようだ。
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列車がトンネルを通過する際の強風から
身を守るために必要だ。
なぜトンネルのなかに駅を作ったのだろう。
そのきっかけは、線路の複々線化によるホーム増備にあった。
元は一本の線路と一つのホームしかなかった筒石駅。しかし、鉄道が発展してゆくと、運ぶヒト・モノが増えてゆき、より多くの列車を走らせる必要性が出てきた。
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エレベーターもエスカレーターもない。
ひたすら階段を登るしか、出る術がない。
ホームと線路を増やそうにも、山がそびえる筒石駅周辺では地上に新しい駅を作ることすら困難だ。折衷案として北陸地方の鉄道輸送増強のために作られた頚城(くびき)トンネルの内部にホームを作ることになった。
改札へ向かう長大なトンネルは、当時のトンネル建設時に使われた業務用の通路(斜坑・しゃこう)を再利用したものだという。10人は横に並べそうな広いトンネル道は、頚城トンネル建設に関わった作業員の多さを想像させられる。
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夏場は湿気により霧がかるのだとか。
真冬でも蒸し暑い筒石駅を探索したあとは、デザートのティラミスが振る舞われた。
「法王のティラミス」といい、ローマ法王も実際に召し上がった逸品だ。
ほろ苦いコーヒーと、まろやかなマスカルポーネ、それに香ばしいナッツが加わって軽快な味わいがする。楽しい雪月花のクルーズも、終盤に差し掛かっていた。
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筒石駅を出たあとは、北陸道屈指の難所であり絶景ポイントである
親不知・子不知の海岸が車窓に広がる。
19:00 ワガママ③「富山の氷見ブリを食べたい」を叶える
雪月花での楽しい時間を堪能したあとは、ローカル電車を乗り継いで富山県高岡市のホテルにチェックインした。富山の美味しいお魚を食べるため、ホテルから地元の回転寿司屋へ向かった。
この時期はちょうど、ブリが富山の湾にやってくる。10のワガママの一つ、「氷見ぶりを食べる」を叶えようと思う。
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地元客で大変賑わっていた。
店の中央にはU字のカウンターが置かれ、カウンター内部では真っ白な調理衣を着た職人さんたちが忙しなく動いている。壁には黒板でオススメのネタや季節の魚の天ぷらといったメニューが書かれている。
気になったものから注文し、東京で食べる魚よりも一段と脂がのった富山の魚に舌鼓を打つ。すると、カウンターから「これからブリを捌きますよー!」という威勢のいい声がした。職人さんがぶら下げているのは、大きく太ったブリ。慣れた手つきで、ブリの巨体は部位ごとに切り離されていく。
「切り離したところはブリ大根にするんですよー」と気さくに話す職人さん。せっかくの機会なので、カマトロを捌いてお寿司にしてもらうことにした。
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13キログラムもある個体だが、お店の人は「普通の大きさかな」と言っていた。
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こんなに分厚く切ってもらって感謝しかない。
念願の氷見ブリ、それもカマトロは、噛んだ瞬間じわっと魚特有のまろやかで優しい脂の旨みが広がる。陸の動物からは決して味わえない、甘味のある柔らかい身を歯でゆっくり崩していくたび、ちょっとした感動で脳に細かな痺れが走ってくる。
氷見には、漁港の海鮮丼や、地元の旅館ではぶりしゃぶといったおもてなし料理も味わえたりするのだが、こうして職人さんと面前で語らい、ブリが切り崩されていく過程を目の当たりにしているからこそ、この瞬間に味わっているブリがたまらなく美味しいと感じるのだと思う。
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弾力があって、クリーミー。今まで食べた白子で一番美味しかった。
あー、美味しい。富山のお魚ってどうしてこんなにも、ジューシーなのか。
春でも夏でも、寒い冬でも、美味しいお魚が食べられるなんて奇跡でしかない。
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奥からカニ、マグロ、甘エビ。
冬の海の味覚といえば、カニがよく紹介される。もちろん、富山をはじめ、日本各地で美味しいカニと出会うことができる。しかし、富山では冬の海の味覚はブリが一番と言われている。派手な見た目ではないが、マグロとも違う柔らかで濃厚なブリならではの味わいを求めて、富山の地に訪れてはどうだろうか。
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手延べで作る麺は、プリッとしていて噛みごたえがある。
稲庭うどんにも近い。
店を出て、冬の夜を歩く。空気は相変わらず冷たいが、富山の美味しい魚と温厚な人たちに出会って心は暖かい。明日は更に南下して、滋賀県へと向かう。
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