地方が直面する人材流出問題を解決するための具体的改善手法とは?
日本の企業では戦後から「年功序列」「終身雇用」の制度が取り入れられてきました。いみじくも、それは高度経済成長期にマッチしており、日本の戦後の立て直しにかけては有効な、誰もが信じて疑わなかった姿勢であり、制度であったと思います。
しかし、現在の傾向では「能力主義」「ジョブ型」に変わりつつあります。
このジョブ型、既に都市部では多くの企業において完全に移行とまでは言えなくても、取り入れまたは一部をそうしている企業が多くなっています。そんな中、地方においてはいまだに「年功序列や終身雇用」前提の制度が重用されているのではないでしょうか?
これはなぜなのでしょう?
そうでなくても、地方企業は「人手不足」が顕著です。
多くの若者が、1都3県を中心とした人口・商圏の多い地域への流出傾向にあり、どの自治体もU・Iターン制度、移住支援金などを予算に組み入れて人材流入、流出防止の施策を打っています。今回は、主に人材流出防止と人口動態における地方の改善点をお伝えしていきたいと思います。
これまでの生産世代と今後のバランス
1960年代から高度経済成長期に入り、1990年代にはIT化が始まりました。
そこから現在までのデジタル進化は著しく、最も効率良く情報を入手できる方法が新聞→テレビ→ネット→SNSのように目まぐるしく移り変わっています。情報が簡単に入手できる分、その信憑性については常に議論を残すところであり、そういう意味では前述に挙げた新聞やテレビのほうが確度が高いという状況については今もって変わりありません。
では、人はどのように変化してきているかに目線を移すと、終身雇用制度に始まり、新卒採用で、若いうちから自社の中でとにかく経験を積ませることで自社にとって替えのきかない存在にまで仕立て上げ、長く勤めてもらう、その中でも有用な人材にとっては管理職として部下の育成後進にも力を注いでもらうというような時代が長きにわたって見られてきました。
上述したように、決して否定されることではなく、このやり方だからこそ身についたものや経験が上から下へと蓄積され、若い会社でも大成長を遂げてきた躍進的な側面もあったことだと思います。
時は2000年に入ったあたりから、徐々にこの見方に疑問が呈されるようになってきました。それは、「制度」そのものというより、「人口推移」を考えたときに、今まで確立されてきた社会のあり方というのが、そのまま子供・孫世代まで移行できるのだろうか?というものです。
その少し前から、いわゆる「バブル崩壊」という経済低調期に入ってしまい、終身雇用制度を前提としつつも、「学生の新卒採用」に暗い影が立ち込めるようになり、1990年代後半から2005年前後までは「就職氷河期」などという言葉まで使われるほど、労働契約を掴む難易度が跳ね上がり仕方なく非正規雇用などの道を選んだ方もいらっしゃったことと思います。
この頃から、「人材派遣」という、雇用ではない働き方も普遍的になり、それに伴って地方での働き口に比較すると比べ物にならないくらいに都市部の選択肢が多いところからも人材流出が加速したのではないかと思っています。もちろん、これだけに限ったことではないと思いますが、地方では選択すらままならないとなると、都市部への流出というのはいたしかたなかった側面もあるのではないかというのも思うところです。
今後の人材流動は?
そして、リーマンショック、東日本大震災など、国内経済への甚大な被害を及ぼした要因もあり、地方自治体にもよるでしょうが、県庁所在地や人流が盛んな地域にばかり人が移り住むようになって、ますます地方は人口減少と高齢化が問題視されるようになってきたというわけですね。
しかし、若い方々の思っているところはどうなのでしょうか。
人が多いということは遊ぶ場所や施設も複数あり、様々な人との交流も可能です。そういった面が魅力的で自ら移り住むのはとても良いことだと思います。
ただ、前述したように、今もなお「そうせざるを得ない」とか「身近に進学先がなくそのまま進学先で就職」ということでいうなら、選択肢の問題もあります。
私なぞが言うまでもなく、たくさんの議論や意見交換を重ねたうえで様々な施策を自治体はとっていると思います。地方中小企業だってそうです。
今やとても簡単になった情報発信は、無料でも可能なわけですから、PRに効果的に取り入れているところのほうが多いでしょう。
しかし、ひとつ忘れてはいけないのは、冒頭お伝えした「ジョブ型」「成果主義」がトレンドということです。あえて、トレンドという言い方にしたのは、それさえもいつまでのことかわからないからです。
DXということばが流行し出したあたりに、こんな言葉を聞きませんでしたか?
「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」
それぞれのワードの頭文字をくっつけて「VUCA」(ブーカ)というそうですが、今既にこういう状態にあるからこそ、トレンドと言いました。
2024年問題ばかり考えているわけにいかないのは、このことからも言えますね。25年はどうなっているのか、読み解いていくのが難しいように年々そうなっていきます。
だからこそ、トレンドに敏速になって、「賃金上昇」とか「週休3日」とか「テレワーク」は積極的に取り入れていかないと、発信している情報は、意味なく終わるかもしれません。
まとめると、現在から以降の流動性においては「こうすると良い」という情報は山のように出てくるので、きちんと見分けて必要だと思う方法をとにかく積極的に実行することです。
評価体制の重要性
地方には、長年の付き合いからの入社などたくさんの繋がりがあります。そのため少数派が評価されない場面があります。今後、評価制度は充実・整理されていないといけない指標になります。何が加点になるのか、成果をあげたらその分が反映されるのか、何を怠るとマイナス評価に値するのか、管理職や経営層でしっかり検討・整備してほしい点です。
その評価を賃金や待遇に反映させられないと、もはや魅力的構造とは言えないということになりかねません。従業員の今後のモチベーションアップにも大切な要素です。
賃金・労働環境の整備
人材流出で原因の多くに入る賃金や労働環境の問題ですが、賃金は働く上で一番重要視する項目でしょう。
入社時の基本給はもちろんのこと、ベースアップ評価のみならず、成果指標も長期的な人材確保の要素です。
また、労働環境ですが、休暇制度の充実も大切です。
休暇体制が充実していればこそ、入社希望者も多いように思います。
要は、「成果や与えたミッションが具現化できているか」が重要であり、毎日出勤できていることが重要なわけではないということです。オンタイム・オフタイムきっちりできているほうが評価されるべき基準になり得ます。
業務委託での対応
上記では「雇用」としての改善方法を述べましたが、業務委託での改善はどうでしょうか?反対に毎月あるバックオフィス業務は業務委託の利用が効果的です。雇用のコストも抑えられます。
「人手不足」は深刻です。人材流出防止策はどのようにされていくかは、それぞれですが、今回の内容がお役にたてば幸いです。
今回はここまで、次回もよろしくお願いいたします!